古代エジプト人、ファラオ時代の1500年前から遺体をミイラ化
樹脂は、松などの木から採取される物質で、防腐混合物の防腐剤成分として使用される。
われわれの以前の研究では、完全な遺体はなく、あったのは英国の博物館に保存されていた亜麻布の小片だけだった。20世紀初頭に発掘者から発掘資金と引き換えに寄贈されたこれらの布が、遺体に包帯が巻かれていたことを示す唯一の証拠だった。
筆者と同僚のロン・オールドフィールドは、考古化学者スティーブン・バックリー氏の協力で、包帯の中の樹脂を発見した。しかしこのほかには、研究の発展につながる標本を手にすることができないまま現在に至っていた。
保存のためのレシピ
2014年に、豪マッコーリー大学からの研究助成金により、トリノにあったミイラの法医学的分析を行うまたとない機会に恵まれた。
われわれは国際チームと連携し、布地と皮膚の微量のサンプルを採取し、それらの生化学分析、放射性炭素年代測定、布地の分析、さらに病気の原因となる細菌のDNA鑑定を行った。
幸い、トリノのエジプト博物館に保管されていたミイラは保存処理がなされておらず、ほとんど汚染されていなかったため、科学的調査には理想的な標本だった。一方で、保存処理がなされていなかったために非常にもろく、損傷も著しいというマイナス面もあった。
胴体や手首に巻かれていた包帯に付着していた残留物をガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)と呼ばれる技術を使って化学的に分析した結果、植物油または動物性脂肪、砂糖またはゴム、針葉樹の樹脂、芳香性植物の抽出物が検出された。