サメの襲撃件数、過去55年で増加も発生率は数百万分の1 大半が軽傷
(CNN) 世界中の海でサメが人を襲う件数は過去55年の間に増加しているものの、当該の国や地域の人口に基づいて割り出した襲撃の発生率は、極めて低い値にとどまっている――そうした調査結果を示した新たな研究が27日、オンライン科学誌のプロス・ワンに掲載された。
研究者らは、米フロリダ州のフロリダ自然史博物館が所有する資料から、サメの襲撃に関する世界的な統計データを収集。米国、オーストラリア、南アフリカなど14カ国を対象に、1960年から2015年までの発生件数を分析した。その結果、14カ国のすべてで1960年以降、サメによる襲撃が10件以上起きていることが分かった。
さらに各地の人口に基づき、サメに襲われる確率も地域ごとに算出した。こうした情報は、サメ全般に関する議論により科学的な根拠をもたらすとともに、種を保護する取り組みにも寄与すると、論文の主要著者を務めたルイジアナ州立大学のスティーブン・ミッドウェー助教は指摘する。
サメ襲撃の発生率は世界的に見ると低いものの、米国の東海岸やオーストラリア南部といった人口密集地域では2倍に跳ね上がっていることが分かった。これらの地域での発生件数は過去20年で倍増している。ただ、それぞれの人口を基にすると、サメに襲われる確率は100万人に1人の水準にまで低下するとみられる。
開発が進み、多くの住民や観光客が海岸を利用するようになれば、サメに襲われる確率も高まる。それでもミッドウェー助教は「世界全域で発生率が増加しているわけではないという事実は強調しておかなくてはならない。また増加したとしても、依然として数百万分の1の確率だ」と語った。
一方、襲撃の内容もまちまちで、映画に出てくるような巨大ザメに狙われて命を脅かされる事例はほとんどない。研究対象の55年間、米国でサメによる襲撃を報告したのは1215人だったが、大半は皮膚のすり傷程度の軽傷で済んでいる。死亡した事例は全体の2%にすぎない。
今回の研究では、サメの襲撃の予測は論点としなかった。しかし各地の襲撃の傾向について長期的な知見が得られれば、人間の活動とも関連付けたうえで、具体的なリスクを特定できるようになる可能性はありそうだ。