火星の表面、「数センチ掘れば氷」の地域も NASA探査機のデータで判明
(CNN) 火星の地下に存在するとみられる水についての研究で、乾燥した地表のわずか2~3センチ下に氷が埋まっている地域があるとの調査結果が今週刊行の学会誌で発表された。
将来の火星の有人探査を見据えるにあたり、生命活動に不可欠な水を現地で確保できるかどうかは重要なポイントだ。火星の表面で水の利用が可能な地域が分かれば、有人探査機の着陸地点を決定する際の参考にもなるとみられる。
今回、研究者らは火星を周回軌道上から調査する米航空宇宙局(NASA)の探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」と「マーズ・オデッセイ」が集めたデータを分析。地表から約2.5センチの深さに水氷が存在する地域を割り出した。
論文の著者でNASAのジェット推進研究所に所属するシルバン・ピクー氏は「ここの氷を掘り出すのに重機は必要ない。シャベルで十分」「今後も地下の氷に関するデータの取集を続けて、宇宙飛行士が着陸するのに最適の地点を絞り込んでいく」と語った。
火星はかつては温暖な惑星で、地表には生命や水が存在していた可能性がある。しかし約35億年前に状況が変わり、大気の大半が失われた。現在は大気の層が極めて薄いため、地表に水が存在したとしてもすぐに蒸発してしまうと考えられる。これまでの研究から、水は氷の状態で極点と中緯度地域の地下に埋まっていることが分かっている。
上記の探査機は熱を感知する機器を通じ、地下の氷がもたらす地表の温度変化を解析した。その結果、すでに氷の存在が確認された地域に加え、地面のすぐ下に氷が存在するとみられる地域の存在が明らかになった。また北半球の「アルカディア平原」と呼ばれる地域には地表から約30センチ以下のところに氷があることが判明。ほかにも地下約60センチに水氷の兆候が認められる地域が見つかった。
研究者らは、これらの氷について今後も調査を続け、火星の季節による変化の有無などを突き止めたいとしている。