日本人の「姓・名」表記、外務省が要請も外国メディアは聞く気なし?
香港(CNN Business) 米紙ロサンゼルス・タイムズは1979年、中国の固有名詞のローマ字表記を変更し、首都北京は「Peking」から「Beijing」に改めると発表した。
しかし、当時はこれを行き過ぎと受け止めるメディアもあり、シカゴ・トリビューン紙は1990年代までPekingを使い続けた。一方、ニューヨーク・タイムズ紙は1986年、Beijingの採用を発表し、この表記が古い表記と同じくらいなじまれるようになったと指摘した。
そして今度は日本がそうした変化を求めている。外務省は昨年、新元号の制定を好機ととらえ、日本人の氏名の書き方を変更するよう外国メディアに要請した。
例えば「シンゾウ・アベ」は姓を最初にして「アベ・シンゾウ」とする。各国のメディアが中国の国家主席を「シー・チンピン」、韓国大統領を「ムン・ジェイン」と表記しているように。
漢字の発音のローマ字表記である「ピンイン」について説明しているロサンゼルス・タイムズ紙(左)とシカゴ・トリビューン紙(画像の一部を加工しています)/LOS ANGELES TIMES/CHICAGO TRIBUNE
もっとも英語メディアがその要請に応えてくれるまでにはまだ相当時間がかかりそうだ。
日本では昔から姓が最初に来る表記が使われていたが、明治時代に入って西洋にならい、英語の表記についてはこの順序がひっくり返された。
だが「姓」が最初に来る書き方に外国人が対応できることは、日本の近隣国が間もなく実証した。日本政府もほぼ20年にわたり、明治時代に覆された順序を再び覆そうと試みており、今回の外国メディアに対する要請もその一環だった。
ただし変化が遅いのは外国人だけではない。ほとんどの日本人は、英語で自分の名を書く場合は姓を後にする書き方になれている。日本政府が首相をはじめとする高官の氏名表記を変えた今も、国内の英字紙などの大部分は依然として「シンゾウ・アベ」を使い続けている。
日本の安倍晋三首相(左)と中国の習近平(シー・チンピン)国家主席。日本政府は「アベ・シンゾウ」のように表記することを求めている/Lintao Zhang/Getty Images AsiaPac/Getty Images
外務省広報によれば、2019年11月の通達により、姓を最初にする形式を1月1日から全省庁で採用することになった。「日本人の氏名については、問題がなければ姓が最初に来る表記を検討するよう、メディア各社に要請している。だが判断については各社に委ねる」と広報は説明している。
今のところ、ほとんどの報道機関は、他社が変更しない限り率先して変更する意向は見せていない。日本の首相の名を「アベ・シンゾウ」と表記する大手報道機関は、CNN Businessが調べた限りでは見つからなかった。
CNNは現時点で「日本人の氏名については名前が最初で姓を後にする形式を使っている。日本の当局者も英語でのコミュニケーションではこの形式を使う傾向にある」とした。「ただしスタイルは進化するものであり、日本政府からの正式要請など重要な変更があれば、当然ながら再考する」と言い添えた。