NASA探査機がタッチダウン、小惑星表面に起きた変化を写真で見る
(CNN) 米航空宇宙局(NASA)の探査機オサイリス・レックスは昨年10月、小惑星ベンヌから試料を回収するためにその表面に着陸し、痕跡を残した。この探査機が今月7日、再びベンヌに接近し、前回のタッチダウンで変化した表面の様子を写真に収めた。
昨年のタッチ・アンド・ゴー(着陸直後に離陸する動き)の際には、探査機の試料回収装置が小惑星の表面から50センチほど深く沈み込み、ロボットアームから窒素ガスを噴射して試料を回収した。さらに探査機が再び小惑星を離れる際の推進力では岩やチリが飛び散る結果となった。
NASAにとっては初となる、試料回収目的での小惑星への着陸だった。
このミッションに携わる研究者は今回、「ナイチンゲール」と呼ばれる探査機の着陸地点の写真を着陸前後で見比べた。
すると、7日の写真には試料を回収した地点にくぼみのようなものが見られ、その底にはいくつか大きな石があることがわかった。これは回収の際にできたものとみられる。小惑星の暗い表面の中で、この地点付近はより光を反射している様子が見られ、試料回収で岩が動いたことを示している。
探査機着陸前の写真。2019年3月7日に撮影/University of Arizona/Goddard/NASA
2021年4月7日に撮影した着陸後の写真。中央にくぼみや石が見え、その周囲には大きな石がキャンプファイアのリングのように丸く並んでいる/University of Arizona/Goddard/NASA
その後探査機が離れる際の推進運動ではさらに大きな動きを引き起こした。いくつもの大きな石がキャンプファイアで使うまきを入れるリングのように丸く並んでいる様子がわかる。これはまるで小惑星表面のクレーター周辺に岩が丸く並んでいる状態にそっくりだ。
研究者はさらに、ある一つの石に注目した。7日の写真で見つけたその石は幅約120センチで、1トンほどあると推測される。
最初、着陸前の写真からはその石を見つけることができなかった。しかしよく見ると、元々は試料回収地点に近い場所にあり、約12メートルも吹き飛ばされていたことがわかった。
着陸前の写真。赤い丸が着陸で動いたとみられる石/University of Arizona/Goddard/NASA
赤い丸が12メートル動いたとみられる石。バツ印はオサイリス・レックスが地表と触れた地点付近/University of Arizona/Goddard/NASA
当初の計画にはなかった7日の撮影は、写真の比較ができるように注意深く計画された。ベンヌはごつごつして岩だらけのため、撮影する角度が違ったり、太陽が真上から照らす時間以外に撮影したりすると表面の様子が変わって見えてしまう。そのため、影の少なくなる太陽が頭上に来る時間を狙って撮影した。探査機は6時間近くかけて小惑星に接近し、表面から2.1マイル(約3.4キロ)の地点まで近づいた。
画像処理チームのメンバーの一人は「(小惑星に)再び戻って我々が実行したことを記録できて胸が躍った。チームは一丸となりこの有終の美を飾った」と語った。
オサイリス・レックスは5月10日に小惑星の軌道を離れ、2年かけて地球に帰ってくる。地球に近づいたら試料の入ったカプセルを放出。カプセルはパラシュートを開いて、2023年9月24日にユタ州の試験訓練場に着地する予定。探査機はその後別の小惑星の探査を続ける。
小惑星から回収した試料は地球の居住可能性、太陽系やその進化に関する情報を解き明かす可能性を秘めている。NASAのジョンソン宇宙センターにある特別収集研究所に移され、世界中の研究者が調べるチャンスを得られる。
アポロ計画と同様に、試料の75%は将来の世代や技術がさらに詳しく調べられるように、安全に保管されることになっている。