UFOの目撃情報に不思議な映像 米国防総省はどう対処したか
ワシントン(CNN) 米政府は長年、軍の制限空域内で謎の飛行物体を目撃したとの報告をほぼ無視してきた。しかし、ここにきて少しずつ、未確認飛行物体(UFO)が実在することを認め始めている。
国防総省はUFOのことを「未確認航空現象」と呼ぶ。
これらの飛行物体が別の世界から飛来したのかどうか推測するのは時期尚早だが、米軍は最近、UFOとの遭遇を捉えた複数の動画や画像を「本物」と確認した。これを受け、UFOとの遭遇について国防総省は何を把握しているのかという疑問の声に拍車がかかっている。
国家情報長官室(ODNI)などは来月、UFOに関する非機密扱いの報告書を議会に提出する予定。
また国防総省の監視機関も、同省がUFO情報にどう対応してきたのか調査する予定だ。事情に詳しい情報筋が今月CNNに明かしたところによると、UFO遭遇への近年の対応を巡り、近くさらなる調査が発表される見通しだという。
以下にUFOに関して知っておくべきことをまとめた。
UFOとは何か?
簡潔に言うと、UFOとは、米国や諸外国が使用するいかなる航空機とも外見や動きの点で似ていない飛行物体を指す。
UFOはその性質上、謎に包まれており、こうした説明のつかない事案に関しては依然答えより疑問の方が多い。
近年はUFOの目撃情報が数多くあるが、軍は最近になってようやく、一部の遭遇例を検証したに過ぎない。
国防総省は先月、海軍要員が2019年に撮影した写真や動画を「本物」と確認した。そこには三角形の物体が明滅しながら雲間を飛ぶ様子が捉えられている。
また国防総省は20年4月、高速で飛ぶ飛行物体を捉えたとみられる赤外線カメラの短い映像3本を公開。そのうち2本では、物体の動きの速さに軍要員が驚きの声を上げている。ドローン(無人機)の可能性を指摘する声も聞こえる。
米海軍は19年9月の時点でこの映像が本物であることを確認していたが、正式公開はその数カ月後だった。国防総省の報道官は当時、正式公開に踏み切った理由について「出回っている映像が本物なのかどうか、映像にはまだ何かあるのかどうかに関する一般の誤解を解くため」と説明。
さらに「徹底検証を行った結果、この映像を公開しても、機密性の高い機能やシステムが漏えいすることはなく、未確認航空現象による軍事空域侵犯に関するその後の調査に影響が出ることもないと判断した」としていた。
これはエイリアン(地球外生命体)のことなのか?
米政府がUFOは実在すると認めたことで、「(宇宙には)我々しかいないのか」という疑問が生まれるのは間違いない。
UFOに関する国防総省の機密調査プログラムの元責任者、ルイス・エリゾンド氏は17年、CNNの取材に「我々は(宇宙で)独りではないかもしれないという非常に有力な証拠がある」との見方を示した。
同氏は17年、同プログラムをめぐる秘密主義や資金拠出への省内の反対に抗議して、国防総省を辞めたという。
ただ実際には、国防総省のUFO目撃情報への対応で焦点となるのはむしろ、UFOが地球のものかどうかに関わらず、潜在的な国家安全保障上の意味合いが真剣に受け止められるようにすることだ。
民主党のマーク・ワーナー上院議員の広報は19年、海軍当局者から未確認機に関する機密報告を受けた後、「正体が観測気球か、小さな緑の男か、あるいは全く別のものかは重要ではない。我々のパイロットに不必要なリスクを冒すよう求めるわけにはいかない」と述べた。
今度のUFO報告書の内容は?
米政府が最近、ここ数十年のUFO遭遇報告に関する情報公開を増やしていることに対し、専門家からは称賛の声が上がるが、ODNIなどの報告書でこの問題に関する包括的な見方が示されるかには懐疑的な向きが多い。
エリゾンド氏は先月、記者団に対し「最良のシナリオでもせいぜい、議会の意図を満たす暫定報告書が提出され、追加で別の報告書を提出するという約束がなされる程度だろう」と説明。「残念ながら、まだ分かっていないことの方がはるかに多い。朗報なのは、ようやくこの問題が真剣に受け止められるようになったことだ」と語った。
国防総省は以前、未確認物体との空中遭遇の記録について調査を進めていたことがある。この機密プログラムは民主党のハリー・リード上院議員の要請で立ち上げられたものの、その後中止になった。
国防総省によると、同プログラムの開始は07年、中止は12年。中止の理由については、資金拠出が必要なより優先度の高い課題があると判断したためとしている。
リード氏やエリゾンド氏らはその後、さらなるUFO情報の開示を政府に求めてきた。これまでに公開された資料は、分かっている情報の表面をなぞる程度に過ぎないという。