雄のトンボの羽、温暖化に対応して色薄く 雌へのアピールポイント失う懸念も
(CNN) 地球温暖化が進行するにつれて、トンボの雄たちが、雌を引き付けるために用いる羽の黒い模様を失いつつあるとする研究結果が、米科学アカデミー紀要に発表された。
今回の研究では、雄のトンボたちが黒ずんだ羽の模様の多くを脱色させ、気候の温暖化に適応していることが明らかになった。研究者らは、雄が持つ羽の複雑な模様がなくなると雌が相手の雄を認識できなくなり、気温が上昇するにつれて、繁殖することができなくなる可能性があると懸念している。
論文の主著者であり、ミズーリ州セントルイスにあるワシントン大学で進化生物学を研究するマイケル・ムーア氏はCNNに対し、「われわれの研究では、こうした種類のトンポの雄と雌は、気候が変化するにつれて、さまざまな形で変化している」と説明。「こうした変化はこの種でかつて起きた進化上の変化よりも、ずっと速度の速い時間枠で起きている可能性が高い」と指摘した。
ムーア氏と同僚らは、米国・カナダ・メキシコ北部の各地に生息するトンボ300種超のデータベースを分析。さまざまな気候および生息地からさまざまな種類のトンボ約2700個体を集め、羽の色を相互比較した。
2019年にムーア氏が共同執筆した論文によると、黒ずんだ羽の模様を持つ雄のトンボは比較的寒冷な条件下で繁殖能力が高まった一方、温暖な条件下では劇的に低下した。今回の研究では、雄のトンボが羽の模様からメラニンを減らすよう進化することで、比較的温暖な気温に適応していることが浮き彫りとなった。
ムーア氏は、「進化上の変化と羽の色合いが、トンボの気象への適応方法と非常に整合していた」と指摘。「地球上の気温の上昇にトンボが対応していく際、羽の色合いにおける進化上の変化が何らかの役目を果たしているのかもしれないと考えるようになった」と語った。
雄のトンボにとって羽の黒ずんだ色合いは、交尾のための重要なアピールポイントとなっており、これで雌を引き付けている。だが道路の色が黒い場合には太陽の熱を吸収するように、羽の黒ずんだ色素もトンボの体温を最大で2度ほど上昇させてしまい、羽の組織を傷め、体温の超過、および生体防御機能の低下をもたらすことから、生死にかかわる影響を引き起こす。
ムーア氏はこれを、良く晴れた暑い日に黒服を着ることで、より暑く感じることに例えている。
だが今回の研究結果は、雄のトンボにしか当てはまらず、雌のトンボは気候変動への対応が進んでいないことを示唆。雌が対応する場合でも、通常は雄の対応の仕方とは逆となっており、ムーア氏によれば理由は分かっていないという。
同氏は、「雌の羽の色合いにおいて、こうした進化上の変化を駆動しているものが何か分かっていない」と説明。「だがこのことが示唆している非常に重要なことの一つは、雄と雌は気候条件に全く同一の方法で対応していると、われわれは推定すべきではないということだ」と指摘した。