使用済みロケットブースター、数週間以内に月面衝突の可能性
(CNN) 使用済みの状態で宇宙空間を漂うロケットブースター1基が、向こう数週間の間に月に衝突する可能性があることが28日までに分かった。専門家らが明らかにした。実際に衝突が起きれば、月の裏側にクレーターができる可能性もあるという。
当該のロケットブースターは米宇宙開発企業スペースXが手掛けた「ファルコン9」で、2015年の米宇宙天気観測衛星「DSCOVR」の打ち上げに使用された。その後は地球・月系の外側部分を漂い続けている。
月への衝突が迫っている可能性については、独立した研究者で軌道ダイナミクスを専門に扱うビル・グレイ氏が最初に発表した。同氏の計算によれば、ブースターが衝突するとみられるのは月の赤道のやや北の地点で、米東部時間の3月4日午前7時26分から1分以内に起こるという。ブースター自体の挙動から実際の衝突地点を正確に割り出すのは困難だが、予測との誤差は数キロ程度にとどまる公算が大きいと同氏は付け加えた。
「現時点では、物体が太陽にかなり近いので、これ以上のデータは得られない。来月7日と8日になれば短時間ながら物体を観測し、より多くのデータを取得する機会が訪れるだろう。衝突の時間と場所についてさらに詳しく確定できるはずだ」(グレイ氏)
米航空宇宙局(NASA)も27日に声明を発表し、ロケットブースターを追跡していることを明らかにした。現在の軌道を分析すると、やはり3月4日に月の裏側に衝突する見通しだという。
追跡ミッションはNASAと米海洋大気局(NOAA)、米宇宙軍が連携して行っている。
欧州宇宙機関(ESA)で宇宙ごみを扱う部局を統括するホルガー・クラグ氏によると、月でのミッションを終えた探査機を意図的に月面に衝突させることは時折あるものの、宇宙ごみが無作為に月面にぶつかる事態は一般的ではないという。
そのうえで同氏は当該のブースターについて、月に衝突させる方が無制御状態で大気圏に突入させるより安全だと指摘する。ブースターは長さ15メートル。重さは3~4トンとみられている。
そのまま放置して太陽の周りを回る軌道上に漂わせておけば、いつか再び地球に引き寄せられないとも限らないと、同氏は指摘。そのうえで「制御された安全な手法でブースターを大気圏に再突入させるのは極めて困難。やはり月面に廃棄するのが最も安全だ」と述べた。