古代都市に雑種のラクダ存在か、ハトラ遺跡から証拠見つかる イラク
神聖な動物を交配して飼育
このラクダの彫刻作品は、168年にサナトゥルク1世と息子のアブサミヤが行った改修工事中に、神殿に加えられたと研究者らは考えている。王家はこの時期、神殿を女神アラートに捧げ直し、ほぼ等身大の自分たちの彫像も建てたとみられている。
石造りのフリーズに関するこれまでの研究では、フタコブラクダが中央に2頭、ヒトコブラクダが8頭彫られていることが示唆されていた。
ヒトコブラクダは、こぶが1つあるアラビアラクダのことで、騎乗やレースに適している。一方、フタコブラクダは中央アジア原産。こぶは2つあり、丈夫で、高地や寒冷地、干ばつにも耐えられるという。
ビダーレ氏ら研究者たちが、この彫刻作品を詳しく観察してみると、フタコブラクダだと思われていた2頭の顔つきや毛並みが、実際にはフタコブラクダとヒトコブラクダを掛け合わせたように見えることに気がついた。
また、2つのこぶの間に大きな隙間はなく、わずかなくぼみがあるだけだった。これは、この2種類のラクダの交雑種に見られる特徴だ。
ローマ帝国やパルティア帝国の遺跡からは最古の雑種のラクダが出土している。その骨格から、人々は紀元1世紀からラクダを交配させていたことが分かっている。
交配することでラクダはより強く、より適応力が高くなるとして、数千年前から交配が行われてきた。雑種のラクダは、ヒトコブラクダ、フタコブラクダのそれぞれ2倍以上の荷物を運ぶことができた。
ハトラは周辺の帝国と比較すると小国であった。だが、中央アジアの草原からフタコブラクダを輸入し、繁殖させることで力を誇示していた。