南極大陸に異常な熱波、平年を38度上回る 世界記録か
(CNN) 南極大陸の観測所で今月に入って異常な気温上昇が観測され、研究者に衝撃を与えている。
南極高原のドームCと呼ばれる地点にあるコンコルディア基地では今月18日、気温がカ氏11.3度(セ氏で零下約11.5度)まで上昇した。同地点は地球上の最寒冷地として知られており、平年であればこの日の最高気温はカ氏で零下56度(セ氏で零下約49度)前後。
非営利研究機関バークリー・アースのロバート・ロード氏によると、同地のこの日の気温は平年をセ氏で約38度も上回ったことになる。同氏は28日、「常設の測候所で観測された平年を上回る気温差で、最も大きい世界新記録が出たようだ」とツイートした。
The recent extraordinary heatwave in Antarctica appears to have set a new World Record for the largest temperature excess above normal (+38.5 °C / +69.3 °F) ever measured at an established weather station. pic.twitter.com/1Z5AiG4DU5
— Dr. Robert Rohde (@RARohde) March 28, 2022
米アリゾナ州立大学教授で世界気象機関(WMO)の報告者を務めるランドール・サーベニー氏はCNNに対し、この種の記録(平年との気温差)に関してWMOでは記録も確認もしていないとしながらも、個人的な見解として、ドームCに関する観測は正規の記録とみなすことができるだろうと説明した。
南極のこの地域でカ氏11度はこれまで観測されたことがなく、平年をこれほど大きく上回る気温は驚異的だった。
例えば米首都ワシントンの今月28日の平年の最高気温はセ氏16.1度だが、今回の記録はそれが55度まで上昇するのに等しい。これまでの観測史上最高は29度だった。
この日過去最高気温を観測したのはコンコルディア基地だけではなかった。世界一低い気温を記録したことで知られるロシアのボストーク基地では、最高気温がカ氏0度に到達。この日の平均気温をカ氏で63度上回り、同基地で過去に記録した3月の最高気温をほぼ27度上回った。
60年以上観測を続けているフランス気象局はこの記録について、「気象学史上、前代未聞」と分析している。
南極東部の気温がこの日、これほど上昇した理由についてサーベニー氏は「非常に興味深い、特異な気象現象が重なって、この出来事を引き起こした」と解説する。
同氏によると、嵐によって海上の湿った空気が大量に陸上に流れ込む現象が発生。同時にこの季節としてはまれな非常に温暖な大気が南極高原に流入し、湿った空気が暖気を閉じ込め、南極東部の気温が急上昇した。
こうした現象は非常にまれだが、人間が観測を始める前にも起きていた可能性はあると、英南極調査所(BAS)のジョン・キング氏は指摘する。
もし南極で異常な温暖が続いた場合、氷に対する長期的な影響が懸念される。キング氏は、18日に発生したような一時的な気温上昇の影響は小さいとしたうえで、「将来的に、もしそうした現象が頻繁になれば、重大な影響が出るだろう」と予想した。