歩行が遅くなるのは認知症の前兆か 米豪の研究
(CNN) 年を取るにつれ、認知機能の衰えと同時に歩くペースが遅くなってきた場合、その後に認知症を発症するリスクは高いとの研究結果が報告された。
研究チームは65歳以上の米国人と70歳以上のオーストラリア人の計1万7000人を、7年間にわたって追跡。分析結果をこのほど、米医師会の専門誌JAMAの最新号に報告した。
参加者らは1年おきに、全体的な認知機能の低下や記憶力、処理速度、発話のなめらかさを測る検査を受けた。
この間に2回ずつ、3メートルの距離を歩くテストも実施された。
その結果、歩く速さが毎年約5%ずつ遅くなり、同時に認知機能の低下もみられたグループは、認知症の発症率が最も高いという結果が出た。どちらか一方だけが衰えてきたグループに比べ、両方の傾向を示すグループのほうが高リスクだった。
研究チームを率いる豪モナシュ大学の特別研究員、タヤ・コリヤー氏はこの結果について、認知症のリスクを判定するには歩行の状態をみることが重要ということが改めて示されたと指摘する。
これまでも高齢者を対象とした小規模な研究で、歩行が年々遅くなるのは認知症の前兆だと指摘されていた。2020年には、米国人約9000人のデータを分析した研究で、歩く速さと記憶力の関係が将来の認知症リスクにかかわっていると指摘されていた。
認知症の多くは、脳の中で記憶をつかさどる「海馬」という部分が萎縮することによって起きるといわれている。これに対し、早歩きや水泳、ジョギング、ダンスなどの有酸素運動によって萎縮を防止し、記憶力を改善することができるとの研究も報告されている。
11年の臨床試験では、有酸素運動のトレーニングで右の前海馬の容積が2%増加し、老化を1~2年取り戻せるとの結果が出た。一方で、ストレッチ運動だけを続けたグループでは同じ期間に、約1.43%の減少がみられたという。