サメの襲撃を生き延びる、もしくは完全に回避する方法とは 専門家が伝授

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米フロリダ州ジュピターの沿岸を泳ぐオオメジロザメ/Harry Collins Photography/Shutterstock

米フロリダ州ジュピターの沿岸を泳ぐオオメジロザメ/Harry Collins Photography/Shutterstock

(CNN) サメの襲撃を生き延びた人の恐ろしい体験談を耳にすることもあるが、あなたが近い将来、サメと格闘する羽目に陥る可能性は極めて低い。

しかし、サメが人を襲うことがあるのは事実だ。

海でサメに襲われて負傷した人の話を聞けば、海で泳ぐのが怖くなるのも無理はないが、次のビーチでの休暇について過度に怖がる必要はない。サメに襲われる可能性は極めて低いのだ。

フロリダ自然史博物館の「国際サメ襲撃ファイル(ISAF)」によると、人が挑発行為を行っていないにもかかわらずサメに襲われたケースは2021年に世界で73件しかなく、また挑発した結果襲われたケースもわずか39件だった。

世界の人口は80億人に迫り、多くの人が海岸近くに住んだり、海岸で休暇を過ごしているにもかかわらず、21年に人がサメにかまれたケースはわずか112件にすぎない。サメに襲われるよりも溺れ死ぬリスクの方がはるかに高い。

とはいえ、万が一サメに襲われた時でも、適切な対策を講じれば助かる可能性は高まるとサメの専門家らは指摘する。

海に入る前に

周囲の環境を把握する

サメは海に生息する生物だ。海は彼らの生息地であり、我々は訪問者にすぎない。

「海に行くなら時、場所にかかわらず、サメと遭遇する可能性があることを認識する必要がある」と語るのは、マイアミ大学ローゼンスティール海洋学校でサメの研究・保全プログラムのディレクターを務めるニール・ハマーシュラグ氏だ。

「幸いにも(サメの食事の)メニューに人間はない。またサメは人を避ける傾向があることも(人間にとって)幸運だ」(ハマーシュラグ氏)

しかし、サメに遭遇しやすい場所は存在する。

河口は泳ぐのに最適な場所ではない

サメの至近距離でダイビングを行うフロリダ州ジュピターのエコツーリズム/Joseph Prezioso/Anadolu Agency/Getty Images
サメの至近距離でダイビングを行うフロリダ州ジュピターのエコツーリズム/Joseph Prezioso/Anadolu Agency/Getty Images

河口は避けるべき、と指摘するのは作家でサメの専門家でもあり、英国のシャーク・トラストやサメ保全協会の元会長でもあるリチャード・パース氏だ。

水が濁っていることが多い河口は、オオメジロザメが好むエリアだ。このサメはホホジロザメやイタチザメと並んで人を襲う可能性が特に高い。

ハマーシュラグ氏によると、海岸線と遠くの砂州(さす)の間のより深い箇所もサメと遭遇する可能性が高いという。

釣りをしているエリアは避ける

海に飛び込む前に水平線を見渡し、漁船が見えたら「そこで泳いではいけない」とパース氏は警告する。

「その釣りが商業目的、レジャー目的のどちらであっても、餌などがその場で捨てられることが多い。また海に投げ込まれた魚の死骸、部位、はらわたがまき餌となり、サメに目をつけられてしまう」とパース氏は言う。

海に入る前に、大量の小・中型の魚が海から跳び出すといった魚の異常な行動にも注意する必要があるとハマーシュラグ氏は指摘する。そのような現象が見られた場合、サメが近くにいる可能性があるからだ。

またハマーシュラグ氏によると、海岸で釣りをしている人がいたら、そこから約50ヤード(約46メートル)の範囲内で泳がない方がいいという。

夕暮れと夜明けの海水浴は避ける

早朝や深夜に海で泳ぐと気持ちはいいが、それらはサメに襲われる可能性が最も高い時間帯でもある。

パース氏によると、サメの襲撃は、サメが視界や識別能力の低下により、他の何かと間違えて人を襲ったケースが多いという。

ライフガードと親しくなる

地中海の仏コルシカ島のビーチで海水浴客を見守るライフガード/PASCAL POCHARD-CASABIANCA/AFP/AFP via Getty Images
地中海の仏コルシカ島のビーチで海水浴客を見守るライフガード/PASCAL POCHARD-CASABIANCA/AFP/AFP via Getty Images

米カリフォルニア州立大学ロングビーチ校の海洋生物学教授で、「シャーク・ラボ」のディレクターも務めるクリス・ロウ氏は、不慣れな海で泳ぐ前に「予習をすべき」とアドバイスする。さまざまな場所で遭遇する可能性のある生物について多少は学ぶべきだ。

不明な点があれば、地元のライフガード(水難救助員)に尋ねよう。ライフガードは素晴らしい情報源だとロウ氏は絶賛する。

海中で光る物を身に着けない

「サメは常に魚を探しているので、宝石類など、きらきらと光る物は注意が必要だ」とロウ氏は言う。

濁った海の中では、サメはその光を魚と勘違いする可能性がある。「サメが我々の手足を魚と間違えたら一大事だ」(ロウ氏)

本能に従う

「最も大事なことは自分の直感に従うことだろう」とハマーシュラグ氏は言う。「その海に入るのは危険と感じたら(中略)決して入ってはいけない」(同氏)

「サメにかまれた経験のある人の多くは、その前に奇妙な感覚があったと述べている。中には海から出るよう促す内なる声を聴いた人もいるが、彼らはその声に従わなかった」(ハマーシュラグ氏)

近くにサメがいたら

メキシコ・グアダルーペ島沖を泳ぐホホジロザメ。同島は世界でも有数のホホジロザメの生息地として知られる/Kike Calvo/AP
メキシコ・グアダルーペ島沖を泳ぐホホジロザメ。同島は世界でも有数のホホジロザメの生息地として知られる/Kike Calvo/AP

慌てない

自分の周りを1匹のサメが泳ぎ回っている時、最悪な行動はパニックに陥ることだ。

「ザブザブと音を立てて泳ぎ回ってはいけない(中略)そんなことをすればサメの興味を刺激し、あおり、助長するだけだ」とパース氏は言う。

パース氏によると、サメが何かを調べたいと思った時、そのための唯一の方法は口に入れてみることだという。こうした理由から「調査目的で」人をかむケースは頻繁にみられるが、その場合かまれた人は死ぬどころか重傷すら負わないこともある。もし海でザブザブと音を立てて泳いでいたら、サメに調査あるいは攻撃の目的でかんでくださいと言っているようなものだ、とパース氏は警告する。

常にサメの目を見る

サメが自分の周りを泳いでいたら、常に顔をサメの方向に向け、サメの目を見続けよう。

パース氏によると、サメは待ち伏せ型の捕食者なので、ずっと目で追われるのは苦手だという。

ハマーシュラグ氏も同意見で、自分の周りにサメがいる時は、サメの方向に体を向け、目で追っていることをサメに認識させるべきだという。その上でボートや海岸に向かってゆっくりと戻る。

大きく見せるか、小さくなるか

ここが難しいところだ。サメが明らかに攻撃モードである場合は、水中でなるべく自分を大きく見せる必要があるとパース氏は言う。

水中では大きく見せれば見せるほど、サメは警戒してくれるが、もしサメが単に通り過ぎようとしているだけなら、ボールのように体を小さく丸めてやり過ごした方がいいとパース氏はアドバイスする。

「サメに食料源を奪おうとする競争相手と見られてしまうと、襲われる1つの理由となりうる」(パース氏)

サメに襲われたら

死んだふりをしてはいけない

相手はクマではなくサメだ。もしサメが攻撃的な態度で向かって来たら、殴ったり、けったり、繊細な部位を突くなどして痛い目に遭わせてやろう。ただし、狙う場所には注意が必要だ。

「サメの鼻を殴るといいと言われる。鼻を殴るのは結構だが、鼻のすぐ下に口があることを忘れてはいけない」とパース氏は警告する。

「サメは水中で動き回るし、自分もじっとしているわけではない。その状況で避けなければならないのは、口もしくはその周りを殴ってしまうことだ」(パース氏)

豪ビクトリア州沿岸でホホジロザメが海上に顔を出す。格闘するなら狙うのは危険な口ではなくその後ろのえらだ/Kelvin Aitken/VWPics/AP
豪ビクトリア州沿岸でホホジロザメが海上に顔を出す。格闘するなら狙うのは危険な口ではなくその後ろのえらだ/Kelvin Aitken/VWPics/AP

サメのえらを強打するのも効果的だ。「えらは非常に繊細なので(中略)そこに1発見舞ってやるのは悪くない」とパース氏は言う。

携帯している物があれば、それを武器にしてもいい。

「水中カメラを持っているダイバーならそのカメラを使い、シュノーケリング中ならシュノーケルを外し、それでサメを突いてもいい」(パース氏)

また他の人と一緒に泳ぐのもいいとロウ氏は言う。サメに襲われにくくなるだけでなく、かまれた時にボートや海岸まで連れて行ってもらえる利点もある。

背後に回り込まれない

米マサチューセッツ州ケープコッド沖合の砂州を横切るホホジロザメ。/Charles Krupa/AP
米マサチューセッツ州ケープコッド沖合の砂州を横切るホホジロザメ。/Charles Krupa/AP

ダイビング中にサメに襲われたら、サメが背後に回り込めない位置に身を置くよう努力すべきだとパース氏は言う。

「例えば、サンゴ礁のようなものを背にすれば、前方にだけ注意を払えばいい。背後からは攻撃されないので、前方の視界にサメを入れておくことができ、自分のボートがあるサンゴ礁の上の海上までゆっくり泳げるかもしれない」(パース氏)

ゆっくり後退する

なるべく水は動かさない。手足をばたつかせたり、しぶきを上げないよう気を付けながら、少しずつ岸に向かって後方に泳ぐ。

「決してサメから目を離さず、本当に少しずつ、かつゆっくりと後ろ向きに泳ぎ、浅瀬に入る。繰り返すが、くれぐれも注意は必要だ(中略)大型のサメは非常に浅い場所でも襲ってくる」(パース氏)

以上のように行動すればある程度危険は回避できるかもしれないが、大きなサメに襲われたら、無傷で逃げられる可能性は低いとパース氏は指摘する。

「ホホジロザメが完全な戦闘態勢の場合、その時点でできることは限られる」(パース氏)

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