冬にかぜが流行するのは「鼻の中の免疫低下が原因」 米研究チーム
(CNN) 寒い季節になるとかぜやインフルエンザ、新型コロナウイルスに感染しやすくなるのは、鼻から入るウイルスなどを取り除く免疫作用が大幅に弱まるのが原因だとして、その仕組みを解明する研究結果が報告された。
鼻科専門医で米ハーバード大学教授のベンジャミン・ブライヤー博士らが6日、アレルギー・臨床免疫学の専門誌JACIに発表した。寒さによって免疫反応が制限されることを、生物学的に分子レベルで説明した研究は初めてとされる。
ブライヤー博士によると、呼吸器系のウイルスや細菌は主に鼻から体内に侵入する。鼻の入り口付近でこれが認識されると、粘膜の細胞がただちに「細胞外小胞(EV)」と呼ばれる小さな物質を何十億個も作り出し、放出する。
EV自体は細胞のように分裂しないが、いわばウイルスを攻撃するために作られる「細胞のミニチュア版コピー」だと、同博士は説明する。侵入してきたウイルスを引きつけ、鼻の奥の細胞への吸着を防ぐ「おとり」の役割を果たすという。
EVは鼻水の中でウイルスを制止し、巣をつつかれたスズメバチの群れさながら一斉にたかって攻撃する。
同博士らの研究では、鼻にウイルスなどが侵入すると、細胞から放出されるEVが通常より160%も増加することが分かった。
EVの表面には、ウイルスを吸着する受容体が元の細胞の最大20倍も存在するという。ブライヤー博士は「あなたが吸い込んだウイルスの粒子をつかまえようと突き出している小さな腕、それが受容体だとしよう」と解説する。受容体の数が多ければ、それだけ粘着力が強いことになる。
体内の細胞には病原体の排除に関与する「マイクロRNA」という分子が含まれているが、その量もEVでは13倍に上ることが明らかになった。
ところが研究の参加者4人について、気温4.4度の寒さの中で15分過ごしてから鼻の中を調べたところ、中の温度は5度下がり、EVの42%近くが機能を失っていた。
EVの表面にある受容体は最大で70%も減少し、マイクロRNAはほぼ半減した。
つまり鼻の中が冷たくなると、鼻からのウイルス侵入を防ぐ力は半分ほどに低下してしまうことになる。
ブライヤー博士はこの研究から、冬にマスクを着けることでウイルスの侵入を防ぐだけでなく、鼻の中を保温して免疫力を維持する効果も期待できると指摘した。
また将来は、点鼻薬でウイルスが侵入したのと同じ反応を起こさせ、免疫を誘導する方法も開発されるだろうと話している。