大西洋の海洋循環、今世紀半ばにも停止か 「早ければ2025年」
AMOCの継続的な観測が始まったのは04年だが、研究チームはより広範囲のデータを調べ、人為的な気候変動が始まる前の海流と比較した。
ディトレフセン教授は「時代をさかのぼる必要があった」と説明する。具体的には、1870~2020年の150年間について、グリーンランドの南側に広がる北大西洋の表面温度を分析した。
この海域では、AMOCで熱帯から運ばれた海水によって水温が上昇する。したがって水温が下がってきた場合、それはAMOCが弱まっていることを意味する。研究チームは、過去のデータから地球温暖化による海水温の上昇分を差し引いて、AMOCの変化を調べた。
その結果、AMOCに重大な変動が起きることを示す前兆が見つかったという。チームは「信頼性の高い」予測として、AMOCが早ければ25年、遅くとも95年には停止し得ると主張した。39~70年に停止する可能性が最も高いという。
ディトレフセン教授はCNNとのインタビューで、「実に恐ろしい」「軽々しく論文に書くような話ではない」と語り、この結論に確信があると強調した。
同教授らの研究に関与していない専門家らは、AMOCの正確な転換点は不明確で、今のところ観測データにはほとんど変化がみられないと指摘する。ただその一方で、憂慮すべき研究結果であることを認め、転換点が従来の予想より早く到来する可能性を示す新たな証拠になるとの見方では一致した。
研究チームは、温暖化や海氷の融解を抑えるために、温室効果ガスの排出量をゼロにする迅速で効果的な対策が必要だと訴えている。