帯状疱疹ワクチンで認知症リスク低下の可能性 米研究
(CNN) 帯状疱疹(ほうしん)ワクチンの接種によって認知症のリスクを低減できる可能性があるとする研究結果が、相次いで発表された。
米国の成人は推定98%が水ぼうそうにかかったことがあり、同じヘルペスウイルス科の水痘帯状疱疹ウイルスを原因とする帯状疱疹を発症するリスクがある。
ヘルペスウイルスの中には、脳内に潜んで免疫力が低下すると活動が活発になる種類があるとの見方が強まっている。理論的には、そのダメージによって認知症を引き起こす可能性がある。
米国では2006年に初の帯状疱疹ワクチン「ゾスタバックス」が認可され、17年にはより効果の高い「シングリックス」が認可された。米疾病対策センターは、50歳以上の高齢者に対してシングリックスの接種を推奨している。
研究チームはシングリックスを接種した数十万人の記録をさかのぼって調べ、別のワクチンを接種したグループとの間で認知症と診断された割合を調査した。
25日の科学誌ネイチャー・メディシンに発表された研究では、ゾスタバックスを接種した65歳以上の約10万人と、シングリックスを接種した65歳以上の約10万人を比較した。
その結果、ワクチン接種から6年以内に認知症と診断された確率は、シングリックスを接種した人の方が、ゾスタバックスを接種した人より17%低いことが分かった。
論文筆者のうち1人は、シングリックスを開発したグラクソ・スミスクライン(GSK)から報酬を受け取ってコンサルタントを務める免疫学者だが、今回の調査にGSKは関与していないと研究チームは説明している。
研究チームは次に、シングリックスを接種した高齢者と、インフルエンザおよびジフテリア・百日咳(ぜき)・破傷風の混合ワクチンを接種した高齢者を比較した。その結果、シングリックスを接種した高齢者の認知症リスクは、インフルエンザワクチンを接種した人に比べて23%、混合ワクチンを接種した人に比べて28%、それぞれ低いことが判明した。
別の研究でも同様の結果
一方、アルツハイマー病協会の国際会議で30日に発表される研究でも同様の結果が出ている。こちらはスポンサーとなったGSKが発表し、まだ外部の専門家による査読は受けていない。
こちらの調査では医療法人オプタムが保有する電子カルテのデータベースを利用。シングリックスまたはゾスタバックスを接種した50歳以上の約60万人を、細菌感染症予防ワクチン「ニューモバックス」を接種した人と比較した。
その結果、ニューモバックスのみを接種した人に比べると、ゾスタバックスを接種した人が5年以内に認知症と診断される確率は8%低く、シングリックスを接種した人は約20%低かった。この差は帯状疱疹ワクチンによるものと推定される。
シングリックスを接種した人が5年以内に認知症と診断される確率は、ゾスタバックスを接種した人に比べると約23%低かった。
帯状疱疹ワクチンと認知症リスク低下の関係については、さらに詳しく調べる必要があると研究者は指摘している。