古代エジプト人はどうやってピラミッドの巨石を積み上げた? 新たな説が浮上

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古代の小川の水は階段ピラミッドを囲む堀やトンネルに流れ込んでいた/Paleotechnic

古代の小川の水は階段ピラミッドを囲む堀やトンネルに流れ込んでいた/Paleotechnic

エジプトの砂漠はかつてサバンナのようだった

同研究チームは、古気候学(過去の気候の研究)や考古学データなど、利用可能なさまざまなデータを分析した結果、古代の小川の水がサッカラ台地の西から、階段ピラミッドを囲む深い堀やトンネルで構成されるシステムに流れ込んでいたと示唆する。
また論文の執筆者らによると、過去のいくつかの研究で、数千年前のサハラ砂漠では、現在よりも日常的に雨が降っていたことが分かっているという。当時のサハラ砂漠は、砂漠というよりもサバンナに近く、乾燥した砂漠の環境よりも多くの植物が育っていた可能性がある。しかし、気候が湿潤だった時期が正確にいつだったかについては説が分かれている。

階段ピラミッドが建設された当時の水量は、水圧リフトのようなシステムを支えるのに十分だった可能性がある、と指摘するのは、英ケンブリッジ大学の地質考古学者ジュディス・バンバリー博士だ。バンバリー博士はこの新しい研究には関与していない。

バンバリー博士によると、過去の研究で、階段ピラミッドが建設された古王国時代に雨水用の排水路が建設・使用されていたこと、また、当時の鳥たちはカエルなど、湿地帯に生息する生物を食べていたことが分かっているという。

一方、専門家の間では、水圧リフトを支えるための構造物を満たすだけの降雨量が常にあったのかについて議論されている。この水圧リフトを支える構造物の一つが、階段ピラミッドやその周辺の構造物を囲む「乾いた堀」と呼ばれる巨大な水路だ。同論文の執筆者たちは、この水路にたまった水が、水力エレベーターの動力源だったと考えている。

エジプト学者で、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の元エジプト考古学上級講師、デビッド・ジェフリーズ氏によると、サハラ砂漠が緑に覆われていた時代は、紀元前3千年紀の開始前に終わった可能性が高いという。

また、わずかな降雨量では、水圧リフトを動かすのに必要な水を構造物にためられないだけでなく、構造物の石灰岩内の水分の喪失を補うこともできない、と語るのはポーランドのワルシャワにあるステファン・ヴィシンスキー枢機卿大学考古学研究所の責任者を務めるファビアン・ウェルク博士だ。ウェルク博士もこの新しい研究には関与していない。

ウェルク氏は、たしかにサッカラを含むエジプト北部では、第3王朝時代(紀元前2670〜2613年)に冬の降雨により気候が湿潤化したが、降雨の強度は比較的弱く、乾いた堀を水で満たすことはできなかっただろうと指摘する。

論文の執筆者たちも、このシステムが永続的に水で満たされていた可能性は極めて低いとの見方に同意する一方で、当時発生した鉄砲水がピラミッドの建設中に水圧リフトを支えるのに十分な水を供給した可能性が高いと主張している。

しかし、執筆者たちは、この時期にどれほどの降雨や洪水が発生したかを正確に把握するためにはさらなる研究が必要だと同論文の中で指摘している。

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