2匹のクシクラゲが1匹に融合、神経系や消化器系も

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研究チームが実験室で二つのクシクラゲの融合に成功/Kei Jokura via CNN Newsource

研究チームが実験室で二つのクシクラゲの融合に成功/Kei Jokura via CNN Newsource

(CNN) 2023年のある夏の夜、城倉圭さんはビーカーに入った塊を手に興奮しながら、米マサチューセッツ州にあるウッズホール海洋生物学研究所に入った。城倉さんは、「クシクラゲ」のコロニーを収容した水槽のある1階から来たところだった。

その塊は他のものよりも大きく、二つのクシクラゲが合体して一つになったように見えた。当時、英エクセター大学の博士研究員だった城倉さんは、最初は自分の目が信じられなかったと振り返る。

城倉さんが現れたとき、米コロラド州立大学の博士研究員マリアナ・ロドリゲスサンティアゴさんは自分自身の研究に取り組んでいた。「私たちは全員、驚き、仰天し、考えた。『どうして、これらは融合して、しかも一体となって泳ぎ、動き回ることができるのだろう』」。ロドリゲスサンティアゴさんがピペットを手にしてクシクラゲの片方をやさしくつつくと、身じろぎした。同時に、それがくっついているとみられるものも同様に動いた。

次の数週間、ロドリゲスサンティアゴさんは、城倉さんがクシクラゲを複数のペアで組み合わせるのを手伝い、何が起こるのかを確かめた。このクシクラゲは科学的には「ムネミオプシス・レイディ」として知られる。城倉さんが主導した研究の結果は科学誌に掲載された。研究では、クシクラゲは体を融合させるだけでなく、神経系と消化器系も融合できることが示された。事実上、二つのクシクラゲが一つになったのだった。

現在は自然科学研究機構基礎生物学研究所に所属する城倉さんは、融合現象によって多くの興味深い問題が提示されると指摘。そうした疑問のなかには、どの遺伝子が融合に関与しているのかや、神経シグナルの伝達はどうなっているのか、「自己」と「非自己」を定義するものは何なのかといったものが含まれる。

クシクラゲは世界各地の沿岸や深海で見つかる。クラゲに似ているが刺すことはなく、有櫛(ゆうしつ)動物と呼ばれる動物群に分類される。

有櫛動物は、地球上で最古といわないまでも、最も古い動物のひとつであり、生命の木にあるすべての動物の姉妹である可能性が高い。そうしたことから、ロドリゲスサンティアゴさんによれば、有櫛動物は神経系機能の基本的な側面を研究するための貴重な機会を提供してくれるという。

城倉さんの論文では、有櫛動物が、自身の細胞や組織と別の生物の細胞や組織の違いを区別することを可能にする保護的なアロ認証機構を持っていない可能性が示された。たとえば、人間だと、こうしたメカニズムによって移植手術の際に臓器の拒絶反応が起こる。

実験では、城倉さんとロドリゲスサンティアゴさんは、クシクラゲの一部を切り取り、切り取ったペアを一晩、シャーレに置いておいた。

10組のうち9組が融合に成功し、二つの感覚器と二つの肛門(こうもん)を持つ生き物が誕生した。一般的なクラゲには、それぞれ一つずつしかない。

城倉さんによれば、融合は予想よりもはるかに早く起きたという。研究チームでは、一部を切除したクシクラゲを互いに近づけて待機した。

最初、クシクラゲは独立して筋肉を収縮し続けた。1時間もしないうちにリズミカルな動きが同調し始める。2時間経過するころには、二つは同期した。片方を軽くつつくと、結合した体の両側が一緒に収縮した。

画像により、消化器系の結合も示された。2日間融合させた一対のクシクラゲの片方の口に、蛍光物質で色付けをしたブラインシュリンプを食べさせた。その後、研究チームは餌の動きを追跡した。

消化された消化物は、消化管を通って結合した境界を越えて、もう片方の消化管に入った。最終的に老廃物は両方の肛門からそれぞれのタイミングで排出された。

ロドリゲスサンティアゴさんは今回の研究で最も興味深いと考えられる点について、「かなりはっきりとした境界線」と考えていた自己と他者との境界線に疑問を投げかけていることだと指摘する。

アロ認証は、危険な病気を引き起こす可能性のある外来細胞を拒絶することができるようになることから、体を守るための適応と考えられている。しかし、ロドリゲスサンティアゴさんによれば、これらの生き物は感覚的な拒絶を回避して、生き残る確率がさらに高まる可能性があるという。

城倉さんは、クシクラゲの神経系が融合後にどのようにからみ合うのか研究したいと考えている。神経回路網を可視化することで、意識の融合のようなものを探求できるようになるかもしれないと語った。

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