湖にはびこる侵略的外来種をバイオプラスチックに、新興企業の画期的解決策 ケニア

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湖にはびこるホテイアオイによって立ち往生している様子。写真は2018年に撮影されたもの/Yasuyoshi Chiba/AFP/Getty Images via CNN Newsource

湖にはびこるホテイアオイによって立ち往生している様子。写真は2018年に撮影されたもの/Yasuyoshi Chiba/AFP/Getty Images via CNN Newsource

(CNN) ケニアの首都ナイロビの北西に位置するナイバシャ湖は、船の航行が困難になりつつある。今、世界で最もはびこっている侵略的外来種ホテイアオイが湖を覆い尽くし、魚を窒息させ、人々を立ち往生させているのだ。

地元の漁師であるサイモン・マチャリア氏によると、ある時、漁師たちは、湖でホテイアオイに閉じ込められ、3日間身動きが取れなくなったという。結局、漁師たちは政府に助けを求め、ヘリコプターで救助された。

また、このホテイアオイのせいで、湖で全く漁ができない日もあるという。漁の最中に、水面に浮かぶホテイアオイの下で漁網を失う可能性があり、その場合、その日の稼ぎがなくなるばかりか、新たに網を調達する費用がかかってしまう。

このホテイアオイによる被害は、ナイバシャ湖だけでなく、世界各地で報告されている。ホテイアオイは南米原産だが、珍しい観賞植物として多くの国に伝わった。それ以降、ホテイアオイは各地の淡水環境にはびこり、南極を除くすべての大陸で侵略的外来種とみなされている。

ホテイアオイの問題は、特にアフリカで深刻化している。

国連環境計画(UNEP)が設立した「生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」の2024年の報告書は、ホテイアオイの「指数関数的拡大」に言及しており、土地利用の変化や気候変動がこの問題をさらに悪化させる恐れがあると指摘している。

大雨でナイバシャ湖の水面が上昇した2020年10月には周辺の住宅の戸口までホテイアオイが押し寄せた/TONY KARUMBA/AFP/AFP via Getty Images
大雨でナイバシャ湖の水面が上昇した2020年10月には周辺の住宅の戸口までホテイアオイが押し寄せた/TONY KARUMBA/AFP/AFP via Getty Images

そんな中、ケニアのある企業が、ホテイアオイをバイオプラスチックに加工することにより、ホテイアオイの爆発的拡大の問題と、ケニアのプラスチック汚染問題を同時に解決しようとしている。

ジョセフ・ングティル氏が設立したヒャパク・エコテック・リミテッドは、ケニアのエガートン大学の土木・環境工学科の学生だったングティル氏の卒業プロジェクトとして始まった。

ングティル氏自身、21年に現地調査のためにナイバシャ湖を訪れた際、乗っていたボートがホテイアオイに閉じ込められ、5時間も立往生した経験を持つ。

ングティル氏のバイオプラスチックは、乾燥させたホテイアオイに結合剤と添加物を加え、混合・成形して作られる。

数カ月で生分解されるこのプラスチックは当初、プラスチック包装の代替品として使用された。ケニアでは17年に使い捨てのプラスチック袋の使用を禁じる法律が導入され、さらに20年には保護区域内での使い捨てプラスチックの使用が全面的に禁止された。

マチャリア氏をはじめ、ナイバシャ湖で漁を営む漁師たちは、現在、ナイバシャ湖に生えているホテイアオイを採り、乾燥させた後、ヒャパクに販売している。このホテイアオイの売り上げは貴重な副収入になっているとマチャリア氏は言う。

またヒャパクのバイオプラスチックは、ケニア政府が進める森林再生プロジェクトで、苗木を栽培・輸送するための袋としても利用されている。

ヒャパクはすでにこのバイオプラスチックを米国とドイツに輸出しており、さらにホテイアオイの広がりに悩まされているインドとエルサルバドルでフランチャイズを展開する計画だ。

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