人種差別反対のアート作品で物議、「サル」が題材 伊プロサッカー
(CNN) 観客の人種差別的な振る舞いが問題視されているイタリアのサッカー界で、1部リーグの委託により制作された人種差別反対のアート作品が物議をかもしている。目の色や形などが異なる3頭のサルの顔を描いたこの作品に対して、「意図が分からない」「逆効果では」といった困惑や非難の声が相次いだ。
問題の作品は伊1部リーグのセリエAが委託したもので、観客がアフリカ系の選手などにサルの鳴き声を模したヤジを飛ばすのを防ぐ取り組みの一環。来年5月に行われる国内カップ戦決勝に向けてアーティストのシモーネ・フガッツォット氏が制作し、16日に公表された。
目や鼻の周りに鮮やかな配色を施した3頭のサルがこちらを見つめるデザインのこの作品。フガッツォット氏はセリエAのウェブサイト上で、自身の敬愛するナポリ所属のセネガル代表選手が試合中に観客からサルの鳴きまねを浴びせられるのを見て、サルをモチーフにした作品のアイデアがひらめいたと語る。
サルは5~6年ずっと描いてきた題材であり、作品を通じて「我々は皆サルだ」ということを伝えたかったと話すフガッツォット氏。今回の作品では青い目をした西洋人のサルと細い目のアジア人のサルを描き、その間に黒人をイメージした茶色い目のサルを配置した。
「サルが火種となって、人々の間に違いはないのだと悟らせる。誰かが人間で誰かがサルだということはない。この時点で、我々は皆サルだ」(フガッツォット氏)
しかし、ここまで作品に対する反応は否定的なものが大半を占めている。欧州サッカーにおける差別に対抗する組織「Fare」はツイッターで「作品に激しい憤りを覚える。逆効果であり、今後もアフリカにルーツを持つ人々の人間性を損なう風潮が続くだろう」「セリエAが何を考えているのか理解に苦しむ。どういった人物から助言をもらったのか? リーグに所属する進歩的なクラブは声を上げるべきだ」と訴えた。
またサッカー選手の代理人を務めるジェン・メンデレビッチュ氏も、自身のツイッターに「お願いだからジョークだといって」と書き込んだ。
CNNはこうした否定的な反応についてセリエAにコメントを求めたが、現時点で回答はない。