東京五輪まで100日切る、1%に満たないワクチン接種率に懸念
選手に関する疑問
新型コロナの感染がほとんどない国でさえ、パンデミック(世界的大流行)のさなかに大規模なスポーツイベントを開催するのは大変だ。
今年1月、オーストラリア・メルボルンで開かれたテニスの全豪オープンでは、厳格な健康状態のスクリーニングの措置に一部の選手からSNS上で不満の声が上がった。同市で小規模な感染流行が発生したのを受けて、一時的に無観客で試合が行われたこともあった。
日本は13日に2112人の新規感染者を出す中、より大きな試練を迎えることになる。
国際オリンピック委員会(IOC)が2月21日に公開した大会のルールブック(プレーブック)によると、外国からの大会参加者は出航前72時間以内に新型コロナの検査を受けて陰性である必要がある。さらに日本でも検査が行われる。
だが、選手は日本到着後14日間の隔離を求められていない。ただし国の予防措置への違反やウイルスに触れた可能性がない場合に限る。
大会中、参加者は「さまざまな間隔で新型コロナの検査を受ける」とされ、すべての選手と訪問者に新型コロナの連絡係があてがわれるという。
海外からの招待客は宿泊先から公式の大会会場や他の限定された場所との行き来のみを求められる。場所のリストは今月公開予定の次のルールブックで示される。
ハグやハイタッチは避ける必要があり、公共交通機関の利用もできない。顔のマスク着用はいつでも求められる。
運営側に選手村でソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)をどのように維持するのかを尋ねたが、返答はない。
五輪が「スーパー・スプレッダー」のイベントに?
選手村の選手は全員来日前の検査で陰性を確認するが、検査を受けずに自宅と大会開催地の間を往来するボランティア数万人との接触は避けられない。
大会組織委員会の公式サイトでは、ボランティアの人が開催地に行くときは公共交通機関の利用を促す記述がある。東京では13日、510人の新規感染者が出ている。
運営側はCNNに対する声明で、ボランティアに感染予防対策を周知するリーフレットを発行していると述べた。そこにはマスクの着用や手洗い、対人距離の確保が記されている。
新型コロナが原因でいずれかのイベントが延期されることもあるかと運営側に尋ねたところ、状況は常に変わるとの回答があった。
ホルトス氏は手指消毒剤とマスク2枚のほかに、健康状態を日々記録する記録帳の提供もあると語る。ボランティアは自分でそれを記録する。
「世界中から人々が集まり、混ざり合う状況になる。もしある会場でクラスターが発生したらどうなるのか。もしそれが我々から発生したものだったらどうするのか」と同氏は語る。
岡教授もボランティアが抱く心配を共有する。大会が危険な新型コロナの変異株を日本だけでなく、世界に広める可能性があると危惧している。
岡氏はまた、選手やボランティアで急激な感染が起きた場合に、既にひっ迫している医療システムで対応しきれるのかと懸念を示す。感染症の専門家として、十分なワクチン接種が行われず、対応策も十分でないままに大会を開催することには賛成できないと言う。
運営側はCNNへの声明で、大会組織委員会は日本での新型コロナの感染状況が大会前に改善していることを大きく期待し、安全で安心な大会を今夏に開けるよう関係者と緊密な連携を続けると述べた。
ボランティアの一人、フィルバート・オノさんは選手とボランティアの安全を守る点で政府やIOCを信頼していると話す。日本人は歴史を目撃するのを楽しみにしており、今大会は歴史的なもの、これまでと違うものになり、心待ちにしているという。大会をどのように行うのかも見たいとも述べた。
ホルトス氏は大会が現状の予防策のままで進むべきではなくと語り、多くの人にウイルスをうつす「スーパースプレッダーのイベントを生み出すレシピになっている」との認識を示す。
「どれほど悪い状況になりうるか想像もつかない。だが、大会が開かれれば後の祭りだろう。皆が入国しだしたらもう後戻りはできない」