人工の皮膚、ロボットに触覚を与える
特殊な皮膚の開発に携わる独ミュンヘン工科大学のゴードン・チェン教授は既に、これまでの取り組みの妨げになってきた課題を一つ克服した。大半の研究ではコンピューターの膨大な計算能力を頼りに、人工皮膚内のあらゆる細胞からの信号を処理してきたが、チェン氏の研究では個々の細胞が活性化した場合にのみ信号を送る。
つまり、システムは大量のデータで飽和することなく、人間の神経系と同じように機能できるのだ。
こうした特徴を備えることで、ロボットは周囲の状況をより敏感に把握できるようになり、人間とやり取りしたり、事故を予測・回避したりする能力が得られる。
米ロボット工業会の幹部、ボブ・ドイル氏は「この技術により、介護のような仕事でロボットが人間に近い距離で働く機会が開けるかもしれない」と指摘した。
具体的には起床を介助したり、家の中での移動を助けたりといった用途を見込んでいるという。
ただ一方で、ドイル氏はこうした技術の現場投入はまだ先のことだとも認め、人間の安全の確保が最優先だと話している。