中国のSNS上でシンプルな「白人の食事」が話題に その背景とは

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シンプルなサンドイッチなど「白人の食事」が中国のSNSで話題になっている/BWFolsom/iStockphoto/Getty Images

シンプルなサンドイッチなど「白人の食事」が中国のSNSで話題になっている/BWFolsom/iStockphoto/Getty Images

(CNN) 温かい麺やスープ、ほかほかのご飯を好む中国で、思いもよらぬ新しい食のトレンドが国内のソーシャルメディアプラットフォーム上で広がっている。

人々が投稿しているのは、チーズで包んだ生のにんじんや、具材がわずか2種類のサンドイッチ、ドレッシングのかかっていないサラダなど、大半の人が非常に味気ないと感じてしまう食べ物の写真だ。

そしてこれらの写真は「#bairenfan」というハッシュタグで統一されている。この#bairenfanを訳すと「#Whitepeoplemeals(白人の食事)」となる。

このハッシュタグが付いた写真に写っているのは、ローストターキーのディナーやチーズバーガーではなく、ほとんど、あるいは全く調理時間がかからない、味も素っ気もなく、冷めた、寄せ集めの料理だ。全く食欲はそそられないが、ランチと言えばこの種の食べ物を連想する西洋人は多い。

このトレンドが本格的に始まったのは今年の5月だ。その頃、中国のソーシャルメディアプラットフォームに、このようなシンプルな食事の写真や動画が投稿され始めた。

ある動画では、欧州の列車の中で、女性がビニール袋から取り出したレタスとハムを重ね合わせ、それにマスタードをかけて食べ始める。

他にも生野菜や、パンに薄切りのボローニャソーセージを1枚挟んだだけのシンプルなサンドイッチの写真が投稿されている。これらは、中国人のネットユーザーたちの外国人の同僚や配偶者が、彼らに提供した食べ物だ。

このトレンドが広がるにつれ、世界中の中国人ネットユーザーたちは、自分たちが体験したシンプルすぎる食事をシェアし始めた。その結果、「#bairenfan」は6月に、さまざまなプラットフォームや地元メディアで最も注目されるフレーズの一つとなった。

「白人の食事」に賛否分かれる

当初、中国でシェアされた「白人の食事」に関する投稿の大半は嘲笑や疑念に満ちていた。

あるユーザーは中国のあるソーシャルメディアで、「オーストラリア人の同僚たちは、白人の食事の『どうでもいい』精神を極端な形で表現している。前回はパン1枚で、今回はにんじんが2本だけ。唯一儀式的に行ったことと言えば、にんじんをランチボックスに入れたことくらい」と投稿した。

また別のユーザーは、2本のにんじんとわずかなホウレンソウが入ったランチボックスの写真をシェアし、こんなわずかな食べ物で十分なエネルギーを生み出せるのだろうか、と懸念を示した。また、そんな食事はむなしいし、気が滅入るとの意見もあった。

そして、このトレンドはツイッターにも広がり、英語を話すユーザーたちが写真や動画に「#whitepeoplemeals」のハッシュタグを付けて共有した。

中国人コミュニティーに限らず、多くのツイッターユーザーたちが、「白人の食事」は実際、笑ってしまうくらい簡素でシンプルだと指摘した。

ある日本人のツイッターユーザーは、米国に留学した際、学生たちがランチにジップロックに入った野菜しか持ってきていないのを見て驚いたという。

一方、中国のソーシャルメディアプラットフォームでは、「#Bairenfanyeshifan」あるいは「#whitepeoplemealsmatter(白人の食事も大事)」という新たなハッシュタグを付け、これらのシンプルな食事を支持する意見を投稿するグループが現れた。

このようなシンプルな食事はダイエットに役立つという意見もあれば、このトレンドは現代社会のライフスタイルや苦難を反映しているとの主張もあった。

また、これらの食事は中華料理のフルコースのように食後に眠くならないので、午後の仕事中に昼寝がしたくてたまらなくなることもないとの意見もあった。

異文化間の違い

マレーシア出身のシェフで、香港の高級レストラン「Auor」の創業者であるエドワード・ブーン氏は、この「白人の食事」のトレンドは、異文化間の違いを浮き彫りにしていると指摘する。

ブーン氏は幼少期、常にプラナカン料理、マレー料理、福建料理に囲まれていたため、サンドイッチを作ることなど考えたこともなく、サラダにも決して手を出さなかったと話す。

幼少期に食べた「白人の食事」に似た食べ物と言えば、ゆで卵とツナの缶詰くらいだという。

ブーン氏は「私の家族の年配者たちは西洋料理が好きではなかったため、私が子どもの頃は自宅で西洋料理が出てくることはなかった」と述べ、家族でアジア料理を囲むのが伝統であり、当時は多くの家族がそうしていたと付け加えた。

手軽で簡単なランチの長い歴史

中国人がいわゆる「白人の食事」に魅力を感じないのは、単に味がないからとか、量が少なすぎるからという理由だけではない。多くの中国人は調理されていない生の食べ物に対して戸惑いを示してきた。これは中国の伝統医学では温かい食べ物や飲み物の方が体にいいとされているためだ。

しかし、広く拡散されている投稿の一部は、これらのシンプルかつ冷めた食べ物が主に昼食時にしか食べられていない点を指摘していない。そしてこれには歴史的な理由があると指摘するのは、食品歴史家で、ボストン大学でガストロノミー部門のディレクターを務めるメーガン・エリアス氏だ。

エリアス氏によると、19世紀半ばから後半にかけ、グローバルノース(北半球の先進国)が都市化し、産業化するにつれ、工場の労働者や事務員らに昼食を販売する市場が生まれたという。

「工場における昼食時間が標準化され、労働者たちの食事の時間が短縮された。また都市化により、職場が自宅から離れている人も多く、自炊もできなくなった。そこに登場したのが、ランチワゴンや迅速なサービスのコーヒーショップだ。彼らは、特に米国で、労働者が外や職場で食べられる、安くて手軽なランチを提供した」(エリアス氏)

また食に関する学者であるエリアス氏は、「白人の食事」のトレンドは、単なるステレオタイプであるだけでなく、他のありきたりな文化的信念に疑問を投げかけるきっかけになるかもしれないと指摘する。

「白人の食事は味気なくて食欲をそそらないと決めつける最近のトレンドは、一般に米国の食べ物の『標準』として押し付けられてきたものを拒絶することにより、米国の食文化の影響を取り除こうとする試みととらえている」とエリアス氏は言う。

「このようなトレンドは、異文化を嫌う人々が、自分たちの食文化が『風変り』とか奇妙だと気付く機会を提供する。これは白人の文化や価値観を中心に据える考え方を改める一つの良い方法と言える。結局のところ、人は自分が好きなものを好むものだが」(エリアス氏)

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