フェイスブック、誕生から20年 その歴史を振り返る
だがスイス連邦工科大学チューリヒ校の研究者が13年に発表した論文によると、フレンドスター没落の主な要因は新規会員が他者と強い結びつきを持っていなかった点だ。そのためユーザー同士の積極的な交流が頼りのプラットフォームの回復力や枠組みが弱体化していった。
また研究では、フレンドスターのデザインや設定も失敗の原因だと指摘された。研究者は論文で「09年の途中、フレンドスターはユーザーインターフェースの変更を行った。同じころ、技術的問題がいくつか浮上し、フェイスブックの人気が台頭していた。これによりコミュニティー内のアクティブユーザーが急速に減少し、結局11年にサービス停止となった」と指摘した。
メタ・プラットフォームズ社の誕生
マイスペースとフレンドスターが失速するなか、フェイスブックは技術革新と買収で勢いを増していった。
「急激に変化する経済分野で、20年近くも経営を続けるのは素晴らしい偉業だ」とボツコウスキー教授は言う。「私は、フェイスブックは企業として、消費者の要望に耳を傾け、最適化された製品を提供しようとすることに長けているように思える。非常に敏速で、成功を収めている」
ユーザーインターフェースやデザインの更新は、デジタル企業の成功に絶対必要というわけではないとボツコウスキー教授は指摘する。その例として、「グーグルはそれほど変わっていない。ソーシャルメディア企業のほうがかなり頻繁に変更している」
フェイスブックに関して言えば、「長年さまざまな変更が行われてきた。すべてが上手くいったわけではないが、現在のプラットフォームは立ち上げ当初とはまるで別物だ」(ボツコウスキー教授)
12年4月、フェイスブックは画像中心のソーシャルメディアプラットフォーム「インスタグラム」を約10億ドル(現在のレートで約1480億円)で買収。それから1カ月も経たないうちに、フェイスブックは1株38ドルで株式市場に上場した。21年にはフェイスブックやアプリの親会社としてメタ・プラットフォームズ社に改名した。
メタ社の持久力の要因は、メッセージアプリに力を入れている点にもある。フェイスブックメッセンジャーに加え、14年には160億ドルで「ワッツアップ」を買収した。14年にはハードウェア分野にも進出し、バーチャルリアリティ企業のオキュラスを20億ドルで買収している。
インドやブラジル、アルゼンチン、イタリアなど、多くの国々でとくに人気の高いメッセージアプリ、ワッツアップについて、「世界人口の大多数がひとつの通信会社を無料で使えるようになる。極めて費用を削減できる投資だ」とボツコウスキー教授は語る。
「こうしたサービスを提供することで、企業はかなりの水準のクリティカルマスを生むことができる。ユーザーはこうした商品を使って、誰とでも連絡が取れる。そして、企業はユーザーの利用データを収集し、それを収益化する方法を考案する」(ボツコウスキー教授)
フェイスブックやインスタグラムが「ティックトック」に対抗する中、ソーシャルメディアのリーダーとしてのメタの地位は微動だにしない。
昨年夏、ユーザーに不評を買った一連のポリシー改正でX(旧ツィッター)が騒動に巻き込まれる中、メタはXと酷似のレイアウトで、入力文字数を制限したアプリ「スレッズ」を立ち上げた。長年Xが売りにしてきた機能、インターネット上でリアルタイムの会話を楽しむ場を提供するのが目的だ。
スレッズは昨年7月のリリースと同時に1日数千万人ベースでユーザーを獲得したが、その後6カ月間のエンゲージメントは下降線をたどっている。