「モロッコの黄金」 アルガンオイルが地域を救う
モロッコ中部アガディール(CNN) モロッコ中部の大西洋岸に位置する美しい街、アガディール。ここで暮らす先住民ベルベル人の女性たちに今、静かな変化が訪れている。そのきっかけとなったのは、この地域固有の低木「アルガン」の種から採れるオイルだ。
ベルベル人は古くから、食用油や薬としてアルガンオイルを愛用してきた。サラダや粒状のパスタ「クスクス」にかけたり、アーモンドやはちみつと混ぜたペーストをパンに塗ったりするのが伝統的な食べ方だ。それが近年、世界の化粧品市場で注目されるようになった。ビタミンEや必須脂肪酸が多く含まれ、にきび、乾癬(かんせん)の治療やしわ予防に効果があるといわれている。
アルガンオイルの需要が急増した結果、アガディールでは生産者の組合が勢い良く発達した。石を使って堅い殻を割り、中の種をひいてペースト状にしてから油を搾り出す。オイル1リットルに約20時間という、手間のかかる作業だ。
ベルベル人の女性が家の外で働くことは、それまでめったになかった。だが現在、アルガンオイルの生産はすべて女性で成り立っている。1996年に初期の組合を立ち上げた大学教授のズビダ・シャルーフさんは、「当時わずか16人の女性でスタートした。ほんどが離婚経験者や独身者だった」と振り返る。