混沌の中の静寂 モロッコの宗教学校を巡る旅
マリーン朝は1248年にフェズを首都とした。ブーイナニアが建てられたのはその約1世紀後。フェズの旧市街に膨大な費用を投じて建設された。現在は国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に指定されており、モロッコ有数の観光地になっている。
来訪者や行商人でごった返すフェズにあって、ブーイナニアは一種の避難所となっている。真ちゅう製の巨大なドアから中に入ると、静けさに包まれる感覚を覚えた。
3大マドラサはいずれもムーア建築の流れを強くくむものだ。壁はムーア建築の代名詞とも言えるモチーフや装飾タイルで彩られている。装飾を施していない場所はほぼ皆無のように見える。柱や壁、ドア、床、窓、アーチ、天井はいずれも芸術品だ。
記者がアブアルハサンを訪れると、入り口を管理する高齢の男性以外は誰もおらず、驚いたことに華麗な空間を独り占めした状態だった。観光地のただ中にあるブーイナニアやベンユーセフとは異なって、このマドラサは周囲から隔絶されており、観光客から見過ごされがちだ。