航空機エンジンで推進するスーパーヨット、「マッドマックス」さながらの構想発表
(CNN) 世界が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に見舞われる中にあっても、スーパーヨットは人気が落ちるどころか、ますます需要が高まっている。
一方、旅客機は事情が異なり、昨年の世界のビジネスジェット納入数は20.4%減少。数百機の航空機が運航中止となり、中には二度と空を飛ばない可能性が高い機体もある。
だがそんな中、ヨットデザイナーのウロス・パバソビッチ氏が異色の構想を考案した。廃棄された航空機を再利用しつつ、スーパーヨットのデザインの限界を押し広げる試みだ。
同氏が考案したヨットは全長130メートルで、船体上部に搭載したジェットエンジンで推進する。
「コブラ」のコンセプトが発表されたのは今月上旬。軍用機の影響を受けた船体は、まるで未来を描いた映画から飛び出してきたようだ。
航空機のエンジンを再利用したスーパーヨット「コブラ」のデザイン画/Uros Pavasovic Studio
「廃棄された航空機はいずれもジェットエンジンの機能が完璧に保たれたままだと報道で知り、映画『マッドマックス』さながらのパンデミック後の世界でエンジンを再利用する方法はないか考えた」(パバソビッチ氏)
パバソビッチ氏によると、船体の設計に当たっては戦闘機の流線型キャノピーに着想を得た。
船体構造については、米ロッキード社の偵察機「SR71ブラックバード」を念頭にコンセプトを策定。SR71は1999年の退役前、米空軍と米航空宇宙局(NASA)が運用していた。
ヨット本体の小型版として、5座席のテンダーボート(補助船)も構想した。ヒントとなったのは地面効果翼機(GEV)、特にジェットエンジンで水面すれすれを滑空した冷戦時代の「エクラノプラン」だ。
パバソビッチ氏はコブラの構想を「SFじみた型破りのコンセプト」と形容しつつも、「建造は可能だ」と主張する。
パバソビッチ氏はコロナ禍で膨大な数の航空機が引退を余儀なくされたのを知り、「コブラ」の着想を得た/Uros Pavasovic Studio
「SFのように見えるかもしれないが、完全なファンタジーではない」「唯一非現実的なのは、エンジン音がうるさいことだ」
ただ、むき出しのジェットエンジンを船内の遮音された部屋に格納すれば、騒音は簡単に消すことができるという。
航空データ企業シリウムによると、2023年末までに解体される航空機は年間1000機に倍増する可能性がある。そのため、こうした形での再利用がトレンドになった場合、利用可能なジェットエンジンが豊富にあるのは間違いない。