北朝鮮で朽ちゆく世界初の「海上浮遊式ホテル」
悲劇
08年、北朝鮮兵士が金剛山観光地区の境界を越えて軍事地帯に入った韓国人女性(53)を射殺する事件が発生。その結果、現代峨山はすべてのツアーを停止する対応を取り、海金剛ホテルも他の施設と同様に営業が止まった。
その後の運営状況は不明だが、韓国人観光客に向けた営業が行われていないことは確かだ。
「情報は不完全だが、私は北朝鮮の支配政党の党員のみを相手に営業していたと見ている」とデヨング氏は指摘する。グーグルマップ上では今でも、ホテルが金剛山地区の埠頭(ふとう)に係留され朽ちつつある様子が確認できる。
19年には、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)総書記が金剛山観光地区を訪れ、海金剛ホテルを含む多くの施設をみすぼらしいと批判。北朝鮮文化により適合した様式に再設計する計画の一環として、多くの施設の解体を命じた。だがそこで新型コロナウイルスの世界的大流行が発生し、すべての計画は保留となった。全面解体の計画が近日中に実施されるのか、そもそも実施されるのか否かも分からない。
その間、このホテルは一日、また一日と生きながらえている。海上浮遊式ホテルのアイデアに人気が出る日は来なかったことから、この種のホテルとしては今後も唯一無二の存在になりそうだ。
あるいは、ある意味では人気が出たともいえる。
「現在の海は浮遊式のホテルだらけだ」とデヨング氏。「それらは単にクルーズ船と呼ばれている」