世界最大の旅客機エアバスA380、そのリサイクル方法とは?
航空ファンのためのアップサイクル
だが、アップサイクルという別の方法もある。ロケス氏の言葉を借りれば、「象徴的な部品やユニークな部品を取り出し、装飾的な要素として使用すること」だ。エアバスは昨年後半、チャリティーの資金調達のために、エミレーツ航空のA380退役機から何百もの部品をオークションに出品した。
ドアストッパー、シートベルト、手すり、出口表示、掛け金、ランプ、カーテン、ケトルといった小さなものから、座席列全体、階段、ドリンクカート、エンジン部品などの大きなものまで、航空ファンにとってはほとんどすべての部品が購入できるチャンスとなったが、中にはさまざまなアーティストによる特別仕様の塗装が施されたものもあった。
最も魅力的だったのは、エミレーツ航空A380のシンボルの一つになっている高さ約2.1メートルを超えるビジネスクラスの機内バーで、およそ5万ドル(約640万円)で落札された。
唯一無二の航空機
このエンジンファンブレードはフランスのグラフィティーアーティストが彩色を施し、競売で売却された/Marion Brochart
多くの航空会社がA380の運航を再開させている今、同型機のリサイクル部品は、既存機をサポートするために長く必要とされるだろう。最近ではカンタス航空が2年間の保管期間を経て、A380を復帰させた。一方、エティハド航空とルフトハンザ航空が、23年初頭に保管中のA380の一部を運航再開させる予定だ。
「A380の寿命はまだ終わっていない。運用をサポートするためにはスペア部品が必要だ。機体を解体し、スペア部品を市場に投入していることは、航空機の長期運用を支えることになる」とロケス氏は説明する。
将来的にA380の運航会社は、主要地域ごとに1社に絞られることになると同氏は推測している。大西洋路線はブリティッシュ・エアウェイズ、中東路線はエミレーツ航空、オセアニア路線はカンタス航空、アジア路線はシンガポール航空といった具合だ。
またロケス氏は、A380のような航空機が再び登場することはないと考えている。「他に類を見ないユニークな航空機で、その寿命は可能な限り延長されるだろう。だが、これに代わる航空機が現れるとは思えない」