「アジアのラスベガス」、マカオの住民の暮らしぶりとは

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米ウィン・リゾーツがマカオで運営するカジノ施設/Bob Henry/UCG/Universal Images Group via Getty Images

米ウィン・リゾーツがマカオで運営するカジノ施設/Bob Henry/UCG/Universal Images Group via Getty Images

(CNN) マカオは中国の特別行政区(SAR)で、香港と比較されることが多い。また大中華圏でギャンブルが合法である唯一の場所であり、「アジアのラスベガス」として知られる。人口は香港の700万人に対し、わずか60万人ほどだ。

マカオは、北のマカオ本島と南のタイパ島の二つの島で構成されている。かつては2島間を船で移動していたが、1972年に二つの島を結ぶ最初の橋が完成した。現在は3本の橋が架かっており、4本目も建設中だ。

わずか40平方キロメートルの世界

世界の人々は、マカオといえばギャンブルを思い浮かべるかもしれないが、マカオの住民は必ずしもそうではない。

マカオで最も古い家族の出身で、8代目のマカオ人であるマリナ・フェルナンデスさんは、ポルトガル語と中国語が混ざったパトゥア語を話す。

フェルナンデスさんによると、地元の住民はめったにカジノには行かず、ギャンブルをしにカジノに行く人はごくわずかだという。また公務員はカジノへの立ち入りを禁止されており、ギャンブルは地元の住民向けというより、観光客向けの娯楽だとフェルナンデスさんは言う。

マカオの生活費の上昇により、カジノや高級店の従業員の中には、マカオに隣接する比較的物価の安い中国本土の都市、珠海(しゅかい)から通勤する人が増えており、それに伴い、広東語ではなく標準中国語を話す従業員も増えている。

マカオは特別行政区であるため、珠海・マカオ間の往来には国境検問所を通過する必要があるが、中国の身分証を保有するマカオの永住者と市民は専用のレーンがあり、審査が迅速に行われる。

2021年のマカオの国勢調査によると、マカオの総人口のおよそ6分の5は中国系で、ポルトガル系はわずか数千人しかいない。ポルトガル語は現在もマカオの公用語であり、標識や政府文書はポルトガル語の使用が義務付けられている。しかし、多くの地元住民は、特に1999年のマカオ返還(マカオの主権がポルトガルから中国に返還された)に先立ち、ポルトガル語ではなく英語や標準中国語を学ぶ選択をした。

19世紀半ば、ポルトガル植民地時代のマカオ/Michael Maslan/Corbis/Getty Images
19世紀半ば、ポルトガル植民地時代のマカオ/Michael Maslan/Corbis/Getty Images

インフラの整備が課題

タイパ島東部にあるマカオの空港は、小規模でターミナルも一つしかないが、近代的で、空港内の移動も容易だ。周辺地域からのフライトが大半で、シンガポール、ジャカルタ、ハノイ、バンコク、北京などへの定期便があるが、北米や欧州への長距離便に乗るには近くの香港、深圳、広州に行く必要がある。

現在、中国は香港、マカオ、広東省の9都市を結ぶグレーターベイエリア(GBA)の接続・促進を目的とした多くのプロジェクトを進めており、2018年に完成した、香港・珠海・マカオを結ぶ世界最長の巨大な海上橋、港珠澳(こうじゅおう)大橋もその一つだ。

一方、マカオ内部のインフラは十分に整備されているとは言い難い。車を持たない地元住民は主に公共バスを利用している。香港には効率的で、よく整備された地下鉄があるが、19年に開業したマカオ唯一の鉄道、マカオLRTは今のところ一路線しかない。また米配車サービス大手ウーバーは17年にマカオでのサービスを中止しており、市内を走るタクシーは現金払いのみだ。

外国人に厳しい労働政策

マカオはその規模の小ささゆえに、外国人に対して厳しい労働政策を実施している。

リスボン出身のリカルド・バロカスさんは、13年に欧州からマカオに移住して以来、さまざまな職に就いてきた。

バロカスさんのようにマカオに移住した外国人の大半は、マカオで7年間居住、労働、納税をした後に永住権を取得する資格を得る。永住権があれば、労働ビザやスポンサー企業がなくてもマカオに居住可能だ。

マカオ政府発行の身分証明書(IDカード)を持つ居住者は、特別行政区の医療サービスを利用できる。またマカオ市民と永住者には、特別行政区政府から年間1万パタカ(約20万円)の手当が支給される。

しかし、フィリピンなど、マカオよりも貧しい地域から来た労働者の多くには別のルールが適用される。多くのフィリピン人は、家政婦や警備員として働くためにマカオにやって来るが、彼らは地元住民と結婚しない限り、永住権や市民権の資格を得ることはできない。

マカオを構成する南のタイパ島にあるポルトガル様式の路面電車/Eduardo Leal/Bloomberg/Getty Images
マカオを構成する南のタイパ島にあるポルトガル様式の路面電車/Eduardo Leal/Bloomberg/Getty Images

「リトルリスボン」での生活

バロカスさんの推定では、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)中に、マカオに住むポルトガル人の約半数がマカオを去った。マカオでは21日間の隔離など、極めて厳格な措置が取られていたためだ。

そのため、バロカスさんは、マカオがポルトガルの植民地だった時代に建設された建物の中にあるレストラン「アルベルゲ1601」などの場所を通じて、マカオに残るポルトガルの遺産を存続させたいと考えている。

バロカスさんは「この辺りには、リスボンと同じように街灯が設置されている」と述べ、さらに次のように続けた。

「この辺りを歩いていると、まるでリスボンにいるような気分になる。ここに来て写真を数枚撮れば、実際にリスボンにいなくても、リスボンにいるふりをすることができると冗談を言うこともある」

しかし、マカオではカジノの好き嫌いにかかわらず、カジノを無視することはできないとバロカスさんは言う。バロカスさん自身も、休日にポーカーゲームに参加することがあるという。

最近、マカオ政府はカジノと地元の特定の通りや店舗を組み合わせ、訪問客にカジノに行ってお金を使うよう促す取り組みを実施しており、バロカスさんも前向きな施策と評価している。ホテルの宿泊客に、コンパクトにまとまっていて徒歩でも観光しやすいマカオの街に繰り出してもらうことは、コミュニティー全体にとってプラスだとバロカスさんは考えている。

バロカスさんは「本音を言うと、マカオに来た人たちにはぜひ、カジノから出てきて、街の中を探索してもらいたい」と述べ、「マカオには美しい美術館や街並みなど、探索すべき場所が山ほどある」と付け加えた。

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