航空機の2段式シート、ファーストクラス向けの最新版を体験

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プレミアムキャビンの2階席に乗ってみせるシェーズロングの最高執行責任者(COO)/Francesca Street/CNN

プレミアムキャビンの2階席に乗ってみせるシェーズロングの最高執行責任者(COO)/Francesca Street/CNN

しかし、このコンセプトにより、航空会社は、新たな収益源を得る、つまり乗客から得る利益を増やしたり、機内により多くの座席を設置したりする新たな方法を見出す可能性がある。それはあくまでボーナスのようなものだが、航空会社にとって魅力的なボーナスであることはヌニェス・ビセンテ氏も認識している。

またヌニェス・ビセンテ氏は、航空会社は歴史的に見て、プレミアム製品に投資する傾向があり、逆にエコノミークラスには投資しないことに気付いた。航空各社のエコノミークラスが似たり寄ったりなのは決して偶然ではない。一方、ビジネスクラスやファーストクラスは、シンガポール航空の空の上のダブルベッド・スイートや、エミレーツ航空のバーチャルウインドウ(仮想窓)など、その豪華さは多種多様だ。

ヌニェス・ビセンテ氏が創業したシェーズロングの「エレベーテッドクラス」は、「ビジネスクラスのレイアウトでファーストクラスの体験が可能」とヌニェス・ビセンテ氏は胸を張る。このエレベーテッドクラスも「航空機全体に大変革をもたらす」同氏の取り組みの一環であり、エコノミークラスに続き、現在はプレミアキャビンの改革に取り組んでいる。

またヌニェス・ビセンテ氏は、「ダブルデッカー」や「2段式」という呼び名からの脱却を目指しており、代わりに「3Dシーティング」という呼称を提案している。同氏は、飛行機全体に2段式シートが設置される未来を想像しているが、航空会社に通常のシートの全廃を提案しているわけではない。同氏がイメージしているのは、シェーズロングのシートが各キャビンの中央に設置され、その両側に通常のシートが並ぶという配置だ。

シェーズロングの最新シートを体験

2段式シートのビジネスクラス・ファーストクラスバージョン。1階席の様子/Francesca Street/CNN
2段式シートのビジネスクラス・ファーストクラスバージョン。1階席の様子/Francesca Street/CNN

AIX 2024でシェーズロングの最新のプロトタイプを最初に試したのはCNN Travelだった。最新版は昨年のプロトタイプよりも小型で、昨年は12席が展示されたが、今年はわずか3席だった。

この最新のコンセプトは一見、より従来型に見えるが、今回も2段式のコンセプトがこのデザインに欠かせない要素となっており、現在の航空機で体験できるいかなるものとも大きく異なっている。

まず下段のシートを試した。ヌニェス・ビセンテ氏によると、この下段シートの目的は、「上から下まで完全に閉ざされた、完全なプライベート空間を作ること」だという。このゆったりとした座席はフルフラットベッドにもなり、さらにエコノミークラス版のように上段の座席の下に広々したフットスペースがあるため、前方に足を伸ばすことも可能だ。

下段のシートの寝心地を実演するヌニェス・ビセンテ氏/Francesca Street/CNN
下段のシートの寝心地を実演するヌニェス・ビセンテ氏/Francesca Street/CNN

昨年のエコノミークラス版プロトタイプの下段シートはかなり窮屈な感じがしたが、この最新のコンセプトは、狭さや圧迫感よりも外部から隔絶されたプライベートな空間という印象が強い。

無論、自分の真上に人が座っていると分かっている場合にどういう気持ちになるのかを判断するのは難しいが、周囲から隔絶され、広々とした自分専用のコンパートメントがあれば、長距離フライトで頭を休め、ひと眠りするのはそう難しくないように思える。

また上段が直接視界に入ってくる感覚はあまりなく、代わりに数メートル先にテレビ画面用のスペースがある壁がある。

シェーズロングのコンセプトは、頭上の荷物棚の撤去が前提だが、通常クローゼットのような代替収納スペースがあるプレミアムクラスでは特に突飛なことだとは感じない。ヌニェス・ビセンテ氏のデザインでは、大きめのスーツケースを収納するのに十分なスペースがシートやフットスペースの下にある。

次に上段のシートだ。こちらは幅広のシートで、やや広いスペースを希望する1人の乗客か、ゆっくりくつろぎたい2人の乗客に適したフルフラットシートだ。ソファのようなデザインのため、同伴者のいる旅行者に最適だ。

ヌニェス・ビセンテ氏はこの上段のシートについて、「(乗客に)まるで自宅にいるような居心地の良さを体験してほしかった」とし、さらに「確保されているスペースは、どのビジネスクラス、ファーストクラスと比べても圧倒的に広い」と付け加えた。

ただ、上段のシートは階段を上る必要があるため、一部の乗客には不向きであることをヌニェス・ビセンテ氏も認識しているが、広々とした下段のシートは、車いすの利用者や、身体的理由で自由に動けない人、さらに介助動物を連れている旅行者でも利用できるように設計されているという。また上段のシートは、天井に近い位置にあるにもかかわらず安全ではあるが、乗客にはシートベルトの着用を促している、とヌニェス・ビセンテ氏は主張する。

上段のシートと下段のシートのどちらがより魅力的かを判断するのは難しい。両者を試した結果、下段のシートは長距離飛行中に睡眠を取るのに適しており、上段のシートは昼間のフライトで、ソファスタイルのシートで映画を見たり、リラックスしたりしたい人に魅力的かもしれない。

しかし、中にはどちらのシートも、全てのシートが同じ高さに設置されている通常の配置のシンプルかつおしゃれなファーストクラスやビジネスクラスのスイートほど魅力的ではないと言う人もいるかもしれない。ヌニェス・ビセンテ氏はデザイナーとして、どちらのシートにも値段は付けず、それはあくまで航空会社の仕事だとしている。

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