ペロシ米下院議長、修正25条発動なければ弾劾進めると初の明言
ワシントン(CNN) トランプ米大統領の支持者らが連邦議会議事堂に乱入した事件を受けてトランプ氏の罷免(ひめん)を求める声が高まるなか、民主党のペロシ下院議長は10日、ペンス副大統領や閣僚による合衆国憲法修正25条の発動がなければ、弾劾訴追の手続きを進める方針を初めて明言した。
ペロシ氏はまず、大統領が職務を遂行できない場合を想定した合衆国憲法修正25条の発動を求める決議案の採択を目指す。
修正25条は、副大統領と閣僚の過半数が大統領を職務遂行不可能とみなして罷免する際の手続きを定めている。下院の決議案はペンス副大統領と閣僚らに対し、その発動を要請する内容。ペンス氏は24時間以内に回答するよう求められる。ペロシ氏は民主党議員らへの書簡で、11日午前に全会一致による採択を試みるとの方針を示した。
ただし共和党議員の反対が予想されるため、全会一致が実現する可能性は低い。その場合、同決議案は12日に本会議で採決にかけられる。
ペロシ氏は書簡の中で、ペンス氏らが応じなかった場合の次の段階として、トランプ氏を弾劾訴追する決議案の審議に進む構えを示した。トランプ氏が民主主義に及ぼす脅威は日増しに強まっていると強調し、「我が国の憲法と民主主義を守るため早急に行動する」と表明した。
ペロシ氏は8日の時点で、民主党はトランプ氏の弾劾手続きを進める用意があると述べていた。決議案にはすでに190人以上の議員が署名し、情報筋によれば11日提出、13日採決という日程が検討されていた。
ただ問題は、上院での弾劾裁判に時間がかかることだ。トランプ氏がウクライナ疑惑で弾劾訴追された1年前の状況を振り返っても、上院で弾劾裁判の間、ほかの審議がほぼ停止してしまうことは確実だ。20日に発足するバイデン次期政権の閣僚任命や、新型コロナウイルス追加経済対策など優先課題への取り組みが滞る事態が懸念される。
共和党のマコネル院内総務は、下院が今後数日でトランプ氏を弾劾訴追した場合は、上院は19日以前には開会しない考えを明言。その場合20日が弾劾裁判の開始日となる。
民主党のクライバーン下院院内幹事/Saul Loeb/AFP/Getty Images
下院民主党指導部のクライバーン議員は10日、CNNとのインタビューで、下院で弾劾決議案が採択されてもすぐには上院へ送付せず、新政権の運営に支障をきたさないよう発足から100日の期間を置く案が浮上していることを明らかにした。
バイデン氏の側近らによると、トランプ氏に対してはこのほか、弾劾に比べて超党派の支持を得やすい問責決議なども検討されている。バイデン氏に近い当局者がCNNに語ったところによると、側近らや民主党指導部の間ではもはや、トランプ氏に何もせずに任期を全うさせるという選択肢は話題に上っていないという。
共和党の議員からもトランプ氏が職を去るべきとの考えを示す議員が出てきているが、弾劾すべきかについては意見が分かれている。リサ・マコウスキー上院議員(アラスカ州選出)はトランプ氏は辞任すべきだと発言。パット・トゥーミー上院議員(ペンシルベニア州)もそれに続いたものの、任期の最終盤で弾劾するのがよいかはわからないとも述べた。下院議員ではイリノイ州選出のアダム・キンジンガー氏が修正25条の発動を支持している。