米先住民、オオカミ猟めぐりウィスコンシン州を提訴 条約の権利侵害と訴え
(CNN) 米ウィスコンシン州で数十年ぶりに解禁されたオオカミ猟をめぐり、先住民オジブワ族の6部族が条約で守られた権利を侵害されたとして、州を相手取って21日に訴えを起こした。
米国に生息するハイイロオオカミをめぐっては、今年1月に米連邦政府の絶滅危惧種指定が解除されたことを受け、ウィスコンシン州が2月にオオカミ猟を解禁した。割り当て量は200頭とした。
オジブワ族には条約に基づく権利が認められていることから、200頭のうち119頭はウィスコンシン州に、81頭はオジブワ族に割り当てられた。
ところがこの割り当てが守られず、先住民とは無関係のハンターが、3日間で218頭のオオカミを殺した。この時の猟期は当初、1週間を予定していた。
11月には今年2度目の猟期が始まる予定で、ウィスコンシン州天然資源局は130頭の割り当てを勧告したが、州の天然資源委員会は300頭の狩猟を許可した。
先住民側は声明の中で、「条約上の権利に基づき、我々と州は資源を50対50で分け合うはずだったが、2月にオオカミが大量殺りくされたことから、我々は適正な配分を受け取っていないと感じている」「州外のハンターは、資源を守るためではなく、ただ自分たちに猟ができるよう、裁判所に訴えている」と主張した。
天然資源局によると、絶滅危惧種の指定は解除されたものの、州内に生息するオオカミの数は、2020年4月の時点でわずか1057頭だった。
オジブワ族の伝統では、人とオオカミは神聖なパートナーとして創造されたと伝えられている。部族代表は「私たちは共に手と手を取り合って歩く兄弟だと神話や伝承は伝えている」との声明を発表した。
部族間団体の代表は先月発表した声明で、2月のオオカミ猟や11月に予定されているオオカミ猟を「無謀」だとして批判、「オオカミ猟の割り当てを300頭とした自然資源委員会の決定は、科学や管理とは一切関係がない」と指摘していた。
ウィスコンシン州の問題は、全米の状況を反映している。オオカミについては別の部族も保護を訴え、再び絶滅危惧種に指定するよう求めている。
全米の複数の部族が今月に入ってハーランド内相に宛てた書簡で再びハイイロオオカミを保護するよう訴え、「部族への相談なくハイイロオオカミの指定が解除されたことは、あなた方新政権が残しておきたくない汚点となる」と強調していた。