米陸軍、気候変動への対応戦略を初公表 50年までにカーボンゼロへ
(CNN) 米陸軍は8日、初めてとなる気候戦略を発表し、2030年までに温暖化ガスの排出量を50%削減し、50年までに「正味ゼロ」を達成するとの目標を掲げた。
報告書によると、同軍は燃料効率の上昇、軍用車両の電動化、「作戦面における発電、蓄電、土地管理、調達」および「サプライチェーン(供給網)の弾力性」の近代化によって、目標を達成する計画だ。
今回の戦略は、オースティン国防長官が就任以来、米軍内において気候変動およびその影響の研究を優先事項に設定したことに伴い策定。同長官は就任直後となる昨年1月、国防総省は軍事活動およびリスク評価において即時、「気候変動への考慮を優先するという、政策面での適切な行動」を取ると表明していた。
クリスティン・ウォーマス陸軍長官は、陸軍の戦略に関する今回の文書の冒頭で、「気候変動は米国の安全を脅かし、我々が知っている形の戦略地政学を変化させている」との見解を表明。「極端な気温下の環境であったり、山火事の消火、ハリケーンに伴う復旧支援に当たったりする兵士たちの今日における作戦行動にとって、気候変動は遠い未来のことではなく、現実のものだ」と述べた。
国防総省の報告書によると、米軍は過去数年の間、陸海空軍の基地が極端な気象による影響を受けてきた。18年のハリケーン「フローレンス」では、ノースカロライナ州にあるキャンプ・ルジューン基地の被害額および修繕費が35億ドル(現在のレートで約4040億円)に上ったとし、19年の洪水では、ネブラスカ州にあるオファット空軍基地が5億ドル(同約580億円)規模の被害を受けたという。
ウォーマス陸軍長官は、「今こそ気候変動に取り組む時だ。気候変動の影響は、自然災害および極端な気象により、サプライチェーンに大損害を与え、我々のインフラにダメージを与え、陸軍兵士およびその家族たちに対するリスクを増加させる」と述べた。
米陸軍の戦略では、「気候関連の脅威に直面する中」で基地にさらなる備えをさせる「行動計画表」を提示。気候変動および関連する気象事象によって引き起こされ得るリスクに向き合うべく、より良き形で備えを講じられるように軍事インフラを変化させていくことによって、「順応性と持続可能性」を高めていくことが、戦略の一環として示されている。
米陸軍は、30年までに同軍施設でゼロカーボン電力を100%使用するという目標を掲げ、電力生産において実質的に排出量をゼロにすることを目指した動きを進めている。この目標を達成すべく、ゼロカーボンの電力源から電気を購入するよう動いているという。