ロシア軍はウクライナ東部で優勢、初期の失敗に学ぶ 米当局者
(CNN) ロシア軍は現在、ウクライナ東部で優位に立っている。同国への侵攻の初期段階に犯した失敗から学び、空襲と地上攻撃のより高度な連携を実現。兵站(へいたん)並びに補給線も改善したことが要因となっている。米国の諜報(ちょうほう)の評価について直接知る当局者2人がCNNに明らかにした。
米国は、最近ウクライナ軍に供与された新たな兵器システムが即座に戦況を変えるとは見ていない。これには高機動ロケット砲システム(HIMARS<ハイマース>)も含まれる。理由の一つとして、こうしたシステムはこれまでのところ、ロシア領内に撃ち込まないように射程にもロケットの数にも制限があるからだ。加えてロシア軍は、155ミリ榴弾(りゅうだん)砲「М777」など、新たな西側供与の兵器を狙いすました攻撃によって破壊することができる。
米国の評価は、長く過酷な戦いがウクライナ東部で繰り広げられるとの見通しを一段と強めている。描かれる将来像は陰鬱(いんうつ)で、人員や装備の損失が両軍で増えるとみられる。米当局者は、ロシア軍が重砲やミサイル攻撃を中心とした東部での猛攻を維持すると考えている。徐々にウクライナ軍を消耗させ、北大西洋条約機構(NATO)の決意を削(そ)ぐのが狙いだ。
ロシア側の進展が顕著に表れたのはこの数日、ウクライナによるリシチャンスクの防衛がますます危うくなって以降だ。同市はルハンスク州でウクライナ側が維持する最後の都市。ロシア軍はこの2、3日で、ウクライナ軍の砲撃による被害を受けながらも、同市南郊の複数の村に進軍した。
今後数週間のうちに、ウクライナのゼレンスキー大統領は主要7カ国首脳会議(G7サミット)とNATO首脳会議でビデオ演説を行うだろうと、複数の米政権高官は指摘する。参加する首脳らは西側諸国によるウクライナへの支援強化を図る考えだという。G7サミットでは、バイデン米大統領が他の首脳とともにロシアへの圧力を強化する措置を明らかにする予定だ。
NATO首脳会議でも、米国は欧州の安全保障の強化などを念頭に置いた複数の施策を発表するだろうと、当局者の1人は語った。
ウクライナ議会の議員らが米国の議員らに告げたところによると、ロシア軍は西側の同盟国がどのくらいの弾薬をウクライナ軍向けに備蓄しているかを計算している。ウクライナ軍の保有する大砲はほとんどがロシア製だ。ウクライナの部隊への補給がやがて尽きるのを待つ計画だという。
米議会下院情報委員会のメンバーでイリノイ州選出のマイク・キグリー議員(民主党)はCNNの取材に答え、ロシアのプーチン大統領について、現状で侵攻を阻まれてはおらず、今後も阻まれることはないと思うと述べた。
「この戦争は数年続く可能性がある」(同議員)
一方、米国とNATOの提携国は、特定の高性能兵器に関して供給力が限界に来ているとの見方を示しつつある。肩に担いで発射する対空ミサイルや対戦車ミサイル「ジャベリン」を含むこうした兵器は、それ自体が複雑な供給線を持ち、ウクライナ軍へ供与した数千基を埋め合わせるには数年かかることも想定される。
また米国防総省の監察総監は22日、自前の弾薬や装備の備蓄を補充する同省の計画の評価に着手したと発表。これらの弾薬並びに装備は依然として相当量がウクライナ向けに供与されているという。
監察総監は声明で「この評価の目的は、ウクライナに供与された装備や弾薬について、国防総省がどの程度補充する計画を立てているのか確定することにある」と述べた。