冷戦時代のリアル「トップガン」、30分でソ連のミグ4機撃墜も戦闘の事実を50年口外せず
新たな世界大戦への危惧
海軍記念館のウェブサイトによると、ウィリアムズさんの英雄的な活躍は国のトップらにも知られるところとなり、海軍の将官や国務長官、当時のアイゼンハワー大統領がウィリアムズさんから直接聞き取りを行った。その後でウィリアムズさんは、交戦について人に話さないよう指示を受ける。当局者らはこの事案をきっかけに米ソ関係の緊張が高まり、第3次世界大戦を引き起こす可能性を危惧していたと、同サイトは説明する。
当該のドッグファイトの記録は直ちに機密扱いとなり、ウィリアムズさんは秘密厳守を誓った。戦場でのウィリアムズさんの勝利が完全に認知されるようになるまで、その後50年以上の年月を要した。
53年、ウィリアムズさんはシルバースター勲章を授与されるが、表彰の内容にはソ連軍機への言及がなく、単に「敵機」とだけ記されていた。また撃墜したのは3機とされ、4機目の存在はロシア側の記録が91年に公開されるまで知られていなかった。
つまり2002年に当該の記録の機密が解除されるまで、ウィリアムズさんはごく近しい人たちにさえ空中戦の実態を伝えることができなかった。
「その後の輝かしい海軍でのキャリアと退役後の数十年間、ウィリアムズ氏が北朝鮮上空でソ連軍のミグと繰り広げたドッグファイトの詳細は秘密であり続けた」と、米国防総省は説明する。
「ようやく政府から連絡を受け、自身の任務の機密が解除されたと告げられた時、ウィリアムズ氏が最初に事実を打ち明けた相手は妻だった」
その後、ウィリアムズさんの功績を知った退役軍人のグループからは、シルバースター勲章では不十分だとの声が上がった。一部には米軍の最高位の勲章、名誉勲章こそふさわしいとする意見もあった。
朝鮮戦争の空中戦から70年以上が経過した昨年12月、カルロス・デルトロ海軍長官は、ウィリアムズさんの勲章を海軍十字章に昇格させるべきだとの見解を示した。
昇格を強く求めていたカリフォルニア州のダレル・イッサ下院議員は、「他に類を見ないトップガン・パイロットであり、米国の永遠のヒーロー」と、ウィリアムズさんを称賛。英雄的な活躍で仲間のパイロットや艦隊の乗組員らの命を救ったと述べた。