米司法省、トランプ氏の免責特権の主張に対抗 議事堂襲撃事件前の演説巡り
(CNN) 米司法省は2日、控訴裁判所に対し、トランプ前大統領が示す大統領の免責特権に関する全面的な主張を拒絶するよう強く求めた。トランプ氏は2021年1月6日に発生した連邦議会議事堂襲撃事件を巡る民事訴訟で、こうした免責特権を主張している。
当該の控訴裁判所は、議事堂襲撃につながったとみられるトランプ氏の行動に対して起こされた複数の民事訴訟を審理している。司法省は同控訴裁に対して、公共の懸案事項にまつわる演説を大統領が行うケースに言及。仮にその内容が暴力をあおったと判明した場合、免責特権は絶対的なものとはなり得ないと告げた。
「大統領が負う職務上の責任のいかなる部分にも、差し迫った私的な暴力の扇動は含まれない」と、司法省は控訴裁への意見書の中で述べた。意見書はワシントンの巡回控訴裁判所が政府に対して提出を求めていたもの。
議事堂襲撃に関わる民事訴訟でトランプ氏が主張する免責特権の問題について、司法省が直接意見を突きつけたのは今回が初めて。訴訟は民主党の下院議員と議会警察の警察官らが起こした。
1982年の最高裁の判断により、大統領は職務上の行動で生じる民事上の損害から完全に免責されることが認められた。ただしどのような場合に大統領の演説が職務行為に該当するのかは、裁判所にとって今なお曖昧(あいまい)な問題となっている。
今回司法省は控訴裁に対し、議事堂襲撃事件の民事訴訟を利用して選挙や政治問題に関する大統領の演説に確固たる線引きを行わないよう警告。判断の内容を「狭め」、あくまでもトランプ氏の弁護士らが主張する免責の是非にのみ焦点を当てるよう求めた。弁護士らはトランプ氏が大統領として行った演説について、たとえ暴力を駆り立てたとしても民事訴訟への免責が適用されるべきとの見解を示している。
当該の訴訟は、現在裁判所がトランプ氏に対する訴えの法的効力に関する問題を検討している段階。訴訟が持つ実際的な利点についての検証はまだ行われていない。訴訟を担当する判事の1人は以前、訴えを退けるよう求めたトランプ氏の申し立てを拒否している。
司法省の意見書提出を受け、トランプ氏の広報担当者は「ワシントンの裁判所は迅速にトランプ氏の利益となる判断を下し、こうした根拠のない訴訟を退けるべきだ」と述べた。
一方司法省は議事堂襲撃事件について、いかなる刑事責任の可能性も検討していないと強調。意見書の脚注で、事件に関わる人物や関連する行動に対して、刑事責任の可能性を巡るいかなる見解も表明しないと述べた。
トランプ氏とその支持者らが2020年大統領選の選挙結果を覆そうとした行動については、現在特別検察官の主導で捜査が行われている。