米シカゴ近郊でパレスチナ系男児が刺され死亡、母親も重傷 大家の男を逮捕
米イリノイ州ジョリエット(CNN) 米中西部イリノイ州シカゴ近郊で14日、パレスチナ系米国人の男児(6)が刃物で刺されて死亡し、母親(32)も重傷を負った。一家が住む家の大家の男(71)が、憎悪犯罪などの疑いで逮捕された。
現地の保安官事務所によると、男児は容疑者に26回刺された。母親も十数回刺されて病院に収容された。在米イスラム教徒らの組織「米イスラム関係委員会」(CAIR)のシカゴ事務所長によると、母親は身心に重い傷を負い、16日に営まれた男児の葬儀に参列できなかった。
司法省が憎悪犯罪として捜査している。ガーランド司法長官はこの事件について、米国内のイスラム教徒やアラブ人、パレスチナ人社会に対する憎悪に駆られた暴力への懸念がさらに強まったと指摘した。
男児の両親はパレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区にある同じ村の出身。母親が12年前、父親が9年前に渡米し、男児は米国で生まれた。
男児の葬儀にはイリノイ州のプリツカー知事も参列。偏見に基づく極めて凶悪な犯罪だと非難する声明を出した。
保安官事務所によると、容疑者は殺人と殺人未遂、憎悪犯罪などの容疑で逮捕され、16日に出廷した。30日に予備審問が予定されている。
容疑者は、一家がイスラム教徒であるとの理由で犯行に及んだとされる。
検察によれば、14日に容疑者と男児の母親の間で、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突をめぐる口論が起きた。
口論が過熱して容疑者が暴力を振るい始めたため、母親はバスルームに逃げ込んで緊急通報した。隠れている間に聞こえた物音から、男児が刺されたことが分かったという。
警官らが現場に到着した時、容疑者は家の前の私道近くに座り込んでいた。
男児と母親は寝室で見つかった。2人とも上半身に多数の刺し傷があり、病院へ運ばれたが男児は助からなかった。
CAIRによると、一家は2年前から容疑者宅の1階に住んでいた。これまで容疑者との間に目立った問題は起きていなかったという。
母親が病院から父親に送ったメッセージによると、容疑者は「おまえたちイスラム教徒は死ななければならない」と叫びながら母親の首を絞め、刃物で襲った。
シカゴのジョンソン市長は、「イスラム恐怖症の破壊的な力を思い知らされる卑劣な憎悪犯罪」だと述べた。
バイデン大統領とジル夫人も声明で犯行を非難し、「米国民は団結してイスラム恐怖症やあらゆる偏見、憎悪を拒否しなければならない」と訴えた。
中東での危機拡大を受けて、米国内でも憎悪犯罪とみられる事件が続発している。
ニューヨーク市では15日にバスの車内で、イスラム教の男性らが頭に巻く布、ターバンを着けた乗客を別の乗客が襲い、ターバンを脱がそうとして繰り返し殴りつけた。
同市内のコロンビア大学では先週、イスラエル支持のポスターを掲げた学生を襲ったとして、19歳の若者が暴行と憎悪犯罪の疑いで逮捕された。