トランプ氏暗殺未遂事件、右派メディア論客が女性警護員の対応を非難
ニューヨーク(CNN) トランプ前米大統領の暗殺未遂事件を巡り、現場でのシークレットサービス(大統領警護隊)の警護態勢に厳しい視線が注がれる中、右派メディアの一部から今回の失態は隊員の構成における多様性の導入や女性の採用に原因があるとの声が上がっている。
警護上の過失が起きたのは、トランプ氏が立っていた選挙集会のステージからおよそ120~150メートル離れた建物で適切な警備が行われていなかったためだが、右派の有力者らは女性嫌悪に根差した非難を展開。銃撃時にトランプ氏の近くにいた女性隊員や、シークレットサービスのチートル長官を槍玉(やりだま)に挙げている。後者はシークレットサービスで二人目となる女性長官で、女性隊員の採用に積極的なことで知られる。
13日、集会で演説中だったトランプ氏に向かって銃弾が発射された直後、男女の警護隊員はステージに上がり、身を挺(てい)してトランプ氏を守る行動を取った。しかし一連のソーシャルメディアの投稿やテレビ番組での発言を通じ、右派のコメンテーターたちは女性隊員らの対応を批判。彼女らは経験不足で体も小さく、状況を処理する能力を持ち合わせていなかったと主張した。
ソーシャルメディア上には女性隊員の能力の低さを示す証拠だとして編集済みの動画が掲載され、数百万回視聴されている。そこには女性隊員の一人が、自身の拳銃をホルスターに収めるのに苦労しているように見える場面が映っている。周囲は混乱した状況で、隊員の一群がトランプ氏を車両の中へ誘導している。
極右メディアのパーソナリティーを務めるマット・ウォルシュ氏はX(旧ツイッター)への一連の投稿で、女性がシークレットサービスで勤務することに否定的な見解を表明。「女性はシークレットサービスに一人も入れるべきではない。最高の人材が配置されるのが当然であって、この仕事での最高の人材は絶対に女性ではない」と書き込んだ。
同氏は従来の性別に基づく役割分担を支持する立場を取り、女性がシークレットサービスに採用されればもっと職務に適した男性が必ず不採用になると、証拠を示すことなく主張している。
一方、連邦捜査局(FBI)の元特別捜査官でCNNの安全保障担当アナリストを務めるジョシュ・キャンベル氏は女性隊員らの対応を評価。「一人の女性隊員がさらに銃弾の飛んでくる事態を想定してトランプ氏をかばう一群に加わる中、別の女性隊員は拳銃を抜いて後方を警備している」と指摘した。またトランプ氏を乗せて現場を去ろうとする車両を守る隊員の中にも女性隊員が加わっていると述べた。
拳銃をホルスターに収める動作については、複数の法執行機関の専門家が通常は急いで行うものではないとの認識を示している。私服を着用した状態であれば、引き金が衣服に引っかからないよう注意を払わなくてはならない場面でもあるという。
シークレットサービスへの女性隊員の加入は1971年から始まった。男女問わず全ての隊員は同一の加入基準を満たさなくてはならないが、体力テストに関しては、女性志望者に対して男性と異なる基準が設定されている。