トランプ次期政権による関税引き上げ、米国民の生活に与える影響は
ニューヨーク(CNN) トランプ次期米大統領は第1次政権の任期中、中国との全面的な貿易戦争を開始した。それは、米国の製造業の強化と、米国の国家安全保障上の利益の確保、そして、トランプ氏が考えるところの極めて不均衡な貿易関係の解決を目指すものだった。トランプ氏は現在、米国にとって最大の貿易相手国であるメキシコと3番目の相手国カナダに注目している。
トランプ氏は驚くべきことに、大統領就任初日の来年1月20日にメキシコとカナダの全輸入品に一律25%の新たな関税を課すと約束した。トランプ氏が交渉した米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)により、両国からの商品はほぼすべて無関税で輸入されている。
つまりトランプ氏がこの関税計画を実行した場合、米国民がメキシコとカナダから購入している主要な消費財の一部は値上がりする可能性がある。
ガソリン
ガソリンと灯油に精製される原油は、カナダからの主要な輸入品の一つ。
価格調査会社ガスバディの石油分析責任者パトリック・デ・ハーン氏によると、トランプ氏が提案した25%の関税はガソリン価格に「大きな影響」を与え、1ガロン当たり25セントから75セントの値上げに相当するという。
トランプ氏は米国での石油の増産を目指しているが、その供給がカナダ産の石油に取って代わるには時間を要するとみられる。また、米国のエネルギー企業が石油の大幅な増産を望むかどうかは不透明だ。世界的な需要は鈍化しており、掘削を増やしても利益を得にくくなっているためだ。
農産物
米国の一部では気候変動によって栽培環境が悪化したため、米国は農産物のメキシコへの依存を高めている。
商務省のデータによると、米国は2022年にメキシコから441億ドル(現在のレートで約6兆7000億円)相当の農産物を輸入した。これは米国の農産物全体の5分の1に相当する。
アボカドの収穫を行う作業員=2月、メキシコ・ハリスコ州/Ulises Ruiz/AFP/Getty Images
例えば、同年に米国人が消費したアボカドの90%は輸入品であり、その89%はメキシコ産だった。つまり、メキシコに25%の関税が課せられた場合、ワカモレとアボカドトーストの値段が急騰する可能性がある。
自動車
商務省のデータによると、米国は23年にメキシコから447億6000万ドル相当の自動車を輸入し、輸入額1位となった。
中国製品に課せられた関税を回避しようとする自動車メーカーが増え、ゼネラルモーターズ(GM)やフォードなど多くのメーカーが生産拠点をメキシコに移したことで、同国は自動車工場の世界的拠点となっている。
米自動車メーカーの株価は26日、急落。下げ幅が最大となったGMは、9%下落して取引を終えた。
メキシコにあるゼネラルモーターズ(GM)の工場 /Maurico Palos/Bloomberg/Getty Images
実質的に米国の全自動車メーカーは自動車やトラックの生産にメキシコの部品を使っている。同国の部品は米国製より大幅に安価だからだ。しかし、25%の関税はこの状況を大きく変えるとみられる。
そして昨年、自動車に次いでメキシコから多く輸入された品目は自動車部品だった。
アルコール
米国が輸入するアルコールのほとんどはメキシコ産だ。
例えば、農務省のデータによると、24年度最初の3四半期に輸入したビールの80%以上はメキシコ産だった。
さらに、メキシコ産テキーラとカナダ産リキュールは蒸留酒の「輸入拡大の主要な原動力」になっているという。
結論:米国民にとって打撃
米国がメキシコとカナダに対する輸入依存度を高める中、トランプ氏は新たな関税を課そうとしている。
商務省の貿易データによると、メキシコは昨年、20年以上ぶりに中国を抜いて米国への最大の輸出国となった。中国は現在、2位の輸出国であり、カナダが僅差(きんさ)で中国を追う。中国が最大の輸出国でカナダとメキシコを寄せ付けなかったわずか2年前とは大きく変化している。
このことは、トランプ氏が約束した新しい関税を米国民は事実上回避できないことを意味する。コスト上昇に直面している企業がその負担を消費者に転嫁する可能性は高いからだ。