サウジでDV禁止法制定、3カ月内に施行へ 実効性に疑問も
ロンドン(CNN) サウジアラビアでドメスティック・バイオレンス(DV)を禁止する法律がこのほど閣議了承された。こうした法律の制定は同国史上初。ただ、人権団体などは、女性の人権が抑圧されている同国での実効性には疑問があると指摘している。
同法は一般国民、特に弱い立場にある女性や子どもを守ることを目的として、3カ月以内に施行される見通し。身体的、性的暴行に対して1カ月~1年の禁錮と1万3300ドル(約132万円)以下の罰金を定めた。暴行が繰り返された場合は裁判官が刑期を2倍にすることも可能。被害者には身体的、精神的治療やカウンセリングを提供する。
同国の法体系はシャリア(イスラム法)に基づいており、新法が制定されることは極めてまれ。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのサウジアラビア研究員アダム・クーグル氏は、今回の法律制定を歓迎すると述べ、「これで身体的、精神的虐待は犯罪となり、訴追しやすくなる。これは正しい方向へ向けた第一歩だ。ただし同法が具体的にどう執行されるのか、DVが実際に法廷で罰せられるのかを見届けなければならない」と語った。
常に男性が保護者となるサウジアラビアの実態は、同法にとって大きな妨げになりかねないとも同氏は言い、「女性が車を運転することも、男性の保護者の許可なく旅行することもできないのに、暴力を振るう夫からどうやって逃げればいいのか」と疑問を投げかける。また、夫婦間のレイプについて触れていないのも問題だという。サウジアラビアではDVが問題になっているものの、被害の実態について調べた信頼できる統計は存在しない。研究者によれば、女性が名乗り出るのを躊躇(ちゅうちょ)することから、過去に強姦事件や暴行事件が発覚したケースは数えるほどしかないという。