大統領選控えるブラジル、W杯がもたらした変化とは
「大きな国家」モデルがこの10年余りの成長を促したのは事実だが、生産性や効率を高めるという意味では、もはや有効なモデルではないようだ。
ブラジルの未来をめぐるこうした議論はW杯の期間中、一時的に影を潜めるかもしれない。だが、猜疑(さいぎ)の念はすでにブラジル政治に深く染みこんでいる。8月初旬に大統領選に向けた選挙活動が始まれば、すぐに批判が再燃するはずだ。
実のところ、ブラジル国民のW杯への見方は冷め切っていた。
世論調査機関のピュー・リサーチ・センターが6月に行った調査によれば、61%の回答者は、公共サービスに投じられるべき財源を奪っているとしてW杯に反対。さらに、W杯は国外におけるブラジルのイメージ向上に資さない、むしろ悪影響だとする回答も62%に上った。
熱狂的なサッカーファンで知られるブラジル人がW杯に否定的になっている背景には、今回の大会が汚職まみれとみなされてきた経緯がある。肥大化するコストめぐる不満も後を絶たない。
大会の期間中、観光客が目にするのは、気前が良く優雅な、いつも通りのブラジル人の姿かもしれない。だが、W杯をめぐる議論は間違いなく大きな変化のきっかけとなった。