2度目の米朝首脳会談 金正恩委員長は何を狙うか
ベトナム・ハノイ(CNN) 2度目となる米朝首脳会談が27日と28日の両日、ベトナム・ハノイで開催される。
米国のトランプ大統領の成功は、北朝鮮の核開発抑止に進展がみられるかどうかにかかっている。一方で、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長にとっての成功については漠然としている。
金委員長が成功と考えるのはどのようなものか、以下に3つのシナリオを探ってみた。
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朝鮮戦争終結の政治的宣言を確かなものにする
金委員長はトランプ大統領と同様に約70年にわたって敵対関係にあった両国首脳が並んで立ち朝鮮戦争の政治的終結を宣言するという劇的で歴史的な瞬間を切望している。正確にいえば、そうした宣言は、正式に戦争を終結する平和条約の役割を果たすわけではない。しかし、金委員長が帰国して国内の人々に勝利を宣伝するには十分だ。
朝鮮戦争の終結は、父親の金正日(キムジョンイル)総書記や祖父の金日成(キムイルソン)主席も実現できなかった目標だ。これを達成すれば、優れた指導者、軍事戦略家としての国内での立場を確固たるものとするだろう。
終結宣言が行われれば、金委員長は国の活動の焦点を軍事から経済へと移すことができるようになるだろう。また、中国や国連、米国との公式な平和条約締結に向けた長期にわたる交渉が始まるはずだ。
より重要なのは、金委員長が、国交回復や核開発プログラムの要素の放棄と引き換えに経済的な譲歩を求めていることだ。国連による経済制裁の解除は金委員長にとっての優先事項だ。
ベトナムに到着し、歓迎を受ける金正恩委員長=26日/NHAC NGUYEN/AFP/Getty Images
姿を見せることで穏当な勝利を
金委員長がハノイで成功を収めるにはいくつかの手段があり、トランプ大統領もそれを実現させる気でいるようだ。
金委員長は、会談に出席してシンガポールでのパフォーマンスを再現するだけで穏当な勝利を手にすることができる。シンガポールでは、核保有国として米国に関与するという姿勢を見せ、外交や貿易のための新しい機会を獲得し、中国や韓国から経済制裁解除の可能性を引き出した。
金委員長がハノイに滞在している間も、遠心分離機は回り続け、ミサイル工場の建設も進んでいる。曖昧(あいまい)な言質や象徴的な振る舞いは金委員長にとって全く負担にならない。一方で、金委員長は、もしトランプ大統領が顧問らを無視して衝動的に見返りなしで譲歩を与えれば、大きな成功を手にできるかもしれない。昨年の首脳会談ではトランプ大統領は軍事演習の停止を発表している。
トランプ大統領にとって成功への道はただ一つ、金委員長に難しい選択をさせることだ。
正しい答えを引き出すには、安易な勝利を宣言しようとする誘惑に抵抗して、より現実的な目標を採用し、検証についての詳細な交渉を開始し、関係の転換にむけた持続的で実務的な取り組みを行うことが必要となるだろう。
核開発の凍結と引き換えに経済制裁の解除
国際社会は、米朝首脳会談とその後の金委員長が目指す戦略的な目標についてはっきりと理解する必要がある。金委員長には2つの戦略的な目標がありそうだ。ひとつは、安全保障を守るために独立した核抑止力を維持することだ。
米朝間に本当の信頼がなければ、米政府は、北朝鮮政府にとって信頼できて不可逆的だと思える安全保障を確約するためにできることはほとんどないだろう。
このため、国際社会は、北朝鮮がしばらくの間は、既存の核抑止力を維持するための能力を弱体化させるような譲歩をするとは考えないほうがいいだろう。
もし、トランプ大統領が、既存の能力の中核的な要素を排除するのではなく、核・ミサイル開発を凍結してこれ以上の前進を阻止することに重点を置いた取引を受け入れる用意があるなら、金委員長にとっての最大の目標の達成につながる可能性がある。
とはいえ、ひどい結果というわけではないかもしれない。北朝鮮との大規模な戦争は回避したいために、国際社会からの高圧的な働きかけの効果は非常に限定的だ。
こうした条件の下では、強制的な軍備縮小を求めることはできず、北朝鮮による核・ミサイル開発プログラムの具体的な段階を踏んだ凍結や規模の縮小が、核のリスクの低減に大きく貢献するといえそうだ。