戦時中の弾薬撤去、スイスの村が丸ごと避難へ 完了まで10年か
(CNN) 第2次世界大戦中に使用されていた弾薬の貯蔵庫の撤去作業を行うため、スイスの村の住民全員が長期にわたる避難を余儀なくされることが2日までにわかった。貯蔵庫には数トンの爆発物が収められているとみられ、当局によるとこれらを取り除くまで10年を要する可能性がある。
地下にあるこの貯蔵庫は第2次大戦中、スイス西部ベルンの南に位置するミトホルツ村の山中に建設された。1947年には庫内にあった約7000トン分の爆発物が爆発し9人が死亡。村は重大な損害を被った。
政府の報道官によれば貯蔵庫の一部は再建され、その後数十年にわたり安全とみなされてきた。スイス軍が医薬品の保管に利用することもあったという。
ところが2018年にリスクの査定を行ったところ、貯蔵庫は当初考えられていたよりもはるかに危険な状態であると判明。さらに推定で3500トンの弾薬が依然として庫内に存在することも分かった。
同報道官はCNNの取材に答え、「弾薬は当該の山から完全に撤去しなくてはならないと判断した。撤去作業中に爆発が起きる危険性が極めて高いため、残念ながら住民は村から退去する必要がある」と述べた。
ミトホルツ村には村民約170人が暮らしている。
約170人が住むミトホルツの村/Courtesy Federal Department of Defence, Civil Protection and Sport
ただ実際の撤去作業が始まるのは31年以降となる。事前に多くの準備を要するというのがその理由で、住民が将来の計画を立てられるように現時点での発表に踏み切ったとしている。同報道官は、詳細について今後多くを詰める必要があるとしながらも、政府の立場として住民が所有する家屋を買い上げたり、何らかの支援を行ったりする用意があると説明した。現在自治体と連携して、住民への調査を実施したところだという。
村を通る道路や鉄道に対しては安全性を引き上げる措置が取られるため、今後も村が周囲から孤立する事態にはならない見通し。
地元メディアは、アムヘルト国防相の25日の会見を引用し、撤去作業に10億スイスフラン(約1120億円)を超える費用が掛かると報じた。
撤去が安全に行えない場合、当局は周辺を岩で覆って弾薬を埋蔵する決断を下す可能性がある。