厳格な行動制限設けないスウェーデン、新型コロナ対策は成功したのか
(CNN) 世界各国が新型コロナウイルス感染拡大への対策に苦慮するなかで、スウェーデンは厳しい行動制限を設けない独自の路線を貫いてきた。このモデルは成功したといえるのだろうか。
スウェーデンでは今も通勤者が街を行き交い、カフェやバーで会話が弾む。大学や高校は遠隔授業に切り替えたが小中学生は学校に通い、美容院やレストランも営業を続けてきた。
それに比べて近隣諸国の対策ははるかに厳格だ。フィンランドは先月16日に緊急事態宣言を出し、デンマークは先月11日に広範な封鎖措置を発表。ノルウェーも先月半ばに移動制限、学校や保育所の閉鎖、イベント中止や美容室などの営業停止に踏み切った。
緩やかな対策を取るスウェーデンの死者数は人口10万人あたり22人を超え、近隣諸国の中でも突出している。デンマークは人口10万人あたり7人余り、ノルウェーとフィンランドはいずれも4人足らずだ。
スウェーデンは近隣諸国と比べて厳しい行動制限を設けていない
先月末にはノーベル財団のヘルディン理事長ら研究者2000人がスウェーデン政府に対し、人と人の接触を厳しく制限して検査能力を大幅に強化するなど、厳格な措置をただちに取るよう求める請願書に署名した。
請願書はまた、インフルエンザのように「集団免疫」ができるのを待つ戦略は科学的根拠に乏しいと指摘した。
これに対し、スウェーデン当局は集団免疫戦略を採用してはいないとの立場だ。ハレングレン社会相はCNNとのインタビューで、新型ウイルスに関して集団免疫を形成する戦略は取っていないと明言した。
一方でカロリンスカ研究所のヤン・アルベルト教授は、同国の研究者の多くが集団免疫戦略を表立って批判しないのは、それが通用する可能性もあると考えているからだと話す。
園芸用品店で「距離を取って。ストップ、新型コロナウイルス」とかかれたベストを着用する従業員/JANERIK HENRIKSSON/TT News Agency/Getty Images
アルベルト氏はさらに、感染を最終的に止める道は集団免疫の獲得またはワクチンの供給しかなく、ワクチンが間に合う可能性は低いと指摘。ロックダウン(都市封鎖)の効果で感染拡大のカーブを緩やかにすることはできても、完全になくすことはできないと述べ、現状の医療体制で必要なケアが十分に提供できるなら、感染を遅らせるメリットははっきりしないと主張した。
スウェーデン医療経済研究所(IHE)のペーテル・リンドグレン所長もCNNに、国内の集中治療室の患者数は数週間前から安定し、医療体制の対応能力を超えてはいないとの見解を示した。一方で、高齢者の介護施設に感染が広がった結果、多くの死者を出しているのは失敗だったと指摘した。
ハレングレン氏も同じく、介護施設入居者の保護を強化することが大きな懸案事項の一つだと話す。リンデ外相が27日、英紙ガーディアンに「失敗例」として語ったのも、介護施設での死者の多さだった。
水辺の近くで春の陽気を楽しむ人々=21日、ストックホルム/JONATHAN NACKSTRAND/AFP/Getty Images
スウェーデンの疫学者、アンデルス・テグネル博士は24日、英BBCとのインタビューで、国内の感染拡大は1週間前にピークを越したとの見解を示した。同国独自の緩やかな対策で切り抜け、すでに相当数の人が抗体を持っていることは、感染の第2波が訪れた場合の助けになるとも語った。
他国のように厳格な措置を取っていれば死者数を抑えられたかという質問には、「現段階で答えを出すのは非常に難しい。わが国の死亡例の少なくとも50%は高齢者施設で起きた。ロックダウンで高齢者施設への感染拡大を抑えることができたかどうかは疑問だ」と答えた。
同国の対策が成功したのか失敗だったのか、はっきりとした答えが出るまでにはまだ何カ月もかかりそうだ。