イラクとシリアで勢力挽回狙うISIS、新型コロナで掃討作戦は後退
(CNN) 新型コロナウイルス流行の影響で、米軍率いる有志連合がイラクとシリアで展開していた過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の掃討作戦が後退を余儀なくされる中、ISISがこの隙を突いて勢力の挽回(ばんかい)を狙っている。
有志連合の高官によると、イラクは新型コロナウイルス感染拡大防止を目的とした夜間外出禁止令を徹底させ、安定を維持するために治安部隊を動員。これに便乗する形でISISの攻撃が増えている。
米国防当局者も、この数週間でISISの攻撃が増加したと語った。
原油価格が暴落する中で、イラク政府が安定を保ちながらISIS掃討を続けられるのかどうかも懸念される。
イラク国会は6日、前国家情報機関トップのムスタファ・カディミ氏を首相に選出。米国務省のマイク・ポンぺオ長官は同日、カディミ首相と会談した。
有志連合高官によると、資金問題に直面しているのはISISも同じだといい、最近相次いだ攻撃の多くは資金集めが目当てだったと思われる。
「ISISの下層指導部は、身代金目当ての誘拐といった資金獲得につながる攻撃に力を入れている。かつてに比べると実入りは減った。まだ稼ぎはあるものの、十分な支えにはなっていない」(同高官)
一方で、イラク軍や有志連合軍が展開していた掃討作戦は後退を余儀なくされている。イラク軍や、米国が支援するシリア民主軍(SDF)が実施するISIS急襲作戦に有志連合軍の部隊が同行することはなくなった。
そうした作戦は、3月の時点ではまだ継続しており、イラク北部で実施したISIS急襲作戦では米海兵隊員2人が死亡した。「新型コロナ前の世界では、(そうした作戦が)まだ続いていた」と同高官は述べ、「現在の新型コロナの世界では実施されていない」と打ち明ける。
ただ、ISIS幹部などの重要な標的が発見されれば、作戦を復活させることもあるとした。
ISISが新型コロナウイルスで生じた隙を突いて態勢を立て直すことができるかどうかはまだ分からない。
ただ、有志連合は引き続きイラク軍上層部への助言や空爆への協力、情報共有などを行う一方で、前線に近い部分での助言といった活動は、新型コロナウイルス対策のために中断している。