中国に機密情報提供か、有力な北極研究者を起訴 ロシア
モスクワ(CNN) 中国に機密情報を渡したとして、ロシア当局が国内の有力な北極研究者を起訴していたことが18日までに分かった。ロシアでは、外国と接触した疑いで研究者が治安機関に摘発される例が相次いでいる。
起訴されたのは、サンクトペテルブルクにある北極科学アカデミーの会長、バレリー・ミトコ被告(78)。弁護人のイワン・パブロフ氏によると、被告は2018年前半、客員教授を務めていた中国の大連海事大学で、国家機密を含む文書を中国情報機関に渡した罪に問われている。
問題の文書は水中音響学を扱ったものだという。これは水中の音の状態を調べる学問で、水中航法や通信、潜水艦の監視などに応用されることが多い。
ミトコ被告は無罪を主張している。弁護人は被告が講義に使う目的でロシアから中国に持ち込んだ情報について、すべて一般に入手できる内容だと主張。一方、ロシア連邦保安局の報道官はコメントを控えた。
ミトコ被告は国家反逆罪で起訴され、今年2月から自宅軟禁下に置かれているが、国家安全保障絡みの案件を担当するパブロフ氏のチームが世論喚起を目的に弁護を引き受けたことで、今になって詳細が明るみに出た。
中ロ関係の専門家からは、北極研究者がスパイ罪で摘発されたことについて、北極で両国の競争が始まりつつあることを浮き彫りにしたとの見方が出ている。
ロシアでは近年、国家機密を外国政府に渡したとして、研究者が起訴や有罪判決を受ける例が相次ぐ。国営タス通信によると、2018年には、極超音速兵器についての情報を含む報告書をベルギーの組織と共有したとして、航空宇宙分野の技術者が起訴された。