海岸に並ぶ豪邸群、浸食で崩落の危機 住民ら退避 豪
(CNN) オーストラリア南東部ニューサウスウェールズ州の沿岸部で海岸の浸食が急激に進み、海を見下ろす豪邸が崩落の危機に陥っている。退避した住民らは、当局の対応に強い不信感を示している。
シドニー北郊ワンベラル海岸の断崖の上に、40軒余りの邸宅が並ぶ。このところ何日も続いた高波で、崖の表面が崩れ始めた。先週撮影された映像には、建物に届きそうな高さまで打ち付ける波や、壊れた階段が映っている。
週末には庭が冠水したり、玄関やバルコニーが崩れたりした家もあった。当局は数十軒が危険な状態にあると判断。住民に対し、2時間以内に荷物をまとめて引き潮の間に退避するよう指示した。
邸宅に迫る白波/James D. Morgan/Getty Images AsiaPac/Getty Images
帰宅許可が出るのがいつになるかは分からない。当局は最も危険な区域の電気やガス、水道を止め、フェンスを立てて立ち入り禁止とした。福祉当局などが緊急の滞在先を準備中だ。
しかし住民は、当局の不十分な対応に不信感を募らせる。
この地域は2016年に猛烈な暴風雨に見舞われたこともあって、住民らは何年も前から気候変動の影響で海岸の浸食が進んでいると訴え、防潮堤の設置を求めてきた。だが地元のセントラルコースト市議会は、昨年ようやく設置に向けた初期調査を始めたばかりだ。
邸宅の下で波による浸食が進む/James D. Morgan/Getty Images
市議会は最近、住民らが近く技術的な対策を講じるなら規制はしないと表明。マシューズ市長は「力を合わせて長期的な解決を」と呼び掛けたが、住民からの批判は強まる一方だ。
住民の一人は「自費では住居を守れない。市議会は何もしてくれない」と語り、市議会の今回の発表は責任を回避する姿勢の証拠だと批判した。
バルコニーが崩れた家も/Nine Network
今年3月に発表された研究結果によると、オーストラリアでは2100年までに、海岸線の砂浜の約50%に相当する約1万1400キロが消失する恐れがある。
同国の地球科学関連当局は、気候変動の影響による浸食の進展で、海岸付近にある3万9000棟近くの建物にリスクがあると公表している。