ロシアが英艦船に「警告射撃」、英側は否定 黒海クリミア半島沖
(CNN) ロシア国防省は23日、黒海のクリミア半島沖の領海に進入した英国の駆逐艦を退去させるため、軍用機による爆弾投下や巡視船による警告射撃を実施したと発表した。クリミア半島は領有権が争われている。
一方、英国防省はロシア側の主張を否定し、英駆逐艦「ディフェンダー」は適法な無害通航を行っていたと説明。同艦に向けて警告射撃が行われた事実はなく、航路への爆弾投下が行われたとの主張も認めないと述べた。
同艦に乗っていた英BBCの記者は、ロシアの軍用機や艦船がディフェンダーに接近するのを目撃したと証言した。
ロシアによると、ディフェンダーは現地時間の23日正午前、クリミア半島フィオレント岬沖の領海の3キロ内側に入った。国家の領海は海岸線から22.2キロ(12カイリ)まで広がる。外国の軍艦がその境界を越える場合、領域国の許可が必要となる。
その後ディフェンダーの前で、攻撃機Su24Mによる爆弾投下や沿岸巡視船による警告射撃が実施されたという。国営タス通信がロシア国防省の話として伝えた。
一方、英当局はロシア側の主張に反論した。
ウォレス英国防相によると、ディフェンダーはこの日午前、ウクライナのオデッサからジョージアに向かって黒海で通常の通過を実施。国際的に認められた分離通航のための回廊に入り、英夏時間午前9時45分に安全に回廊を抜けた。いつもの通りロシア艦はディフェンダーを追尾し、またディフェンダーは付近での演習について連絡を受けていたという。
英国防省は声明で、ディフェンダーは国際法に従ってウクライナの領海で無害通航を実施していたと説明。当時、ロシア側は黒海で砲撃演習を行っており、海洋関係者に対して事前警告したとの見解を示した。
そのうえで「ディフェンダーに向けて射撃が行われた事実はなく、ディフェンダーの進路に爆弾が投下されたとの主張も認めない」とした。
乗艦していたBBCのジョナサン・ビール記者は、無線で敵対的な警告が発せられ、1つは「航路を変えなければ撃つ」という内容だったとBBCの記事で伝えた。遠くで射撃音が聞こえたものの十分射程外だったという。
前日にはディフェンダーの艦上で、英国の軍事企業バブコックがウクライナの海軍能力向上を支援する契約の署名式が行われた。ウクライナと英国の防衛関係者が参加した。この動きがロシア側の怒りを買った可能性がある。
ロシアは2014年にクリミア半島を併合したが、国際社会は併合に反対し同半島をウクライナの領土と位置づけている。