デルタ株拡大の影響、イスラエルと英国の前例から分かることは
(CNN) 米国で新型コロナウイルスの変異株「デルタ」の感染が拡大するなか、数週間前からデルタ株が優勢となっているイスラエルと英国の前例を基に、専門家らはワクチン接種の重要性を指摘している。
デルタ株はインドで最初に見つかった変異株で、感染力の強さが指摘される。
イスラエルではすでにデルタ株が新規感染の9割を超えた。国内で最初にデルタ株が確認された4月中旬と比べ、1日当たりの新規感染者数は2倍に増えている。
一方で死者数は、当時の1日当たり5人を下回る状態が続き、5月の最終週以降は平均2人未満にとどまっている。
英国では5月中旬にデルタ株が確認された時と比べ、新規感染者も死者も増加した。ただし感染者が約12倍と急増したのに対し、死者数は2倍前後だ。
死者数は感染者数より2~3週間遅れて増加する傾向がある。これを考慮した比較でも、3週間前の感染者数は最新の死者数より急激なペースで増えていたことが分かる。
イスラエルと英国の例から、デルタ株の感染拡大によって、必ずしも従来のように死者が急増するわけではないと主張する専門家もいる。
特に注目されるのは、イスラエルの死者が少ない点だ。これは同国でワクチン接種が進んでいるためだと、専門家は指摘する。
英統計サイト「アワー・ワールド・イン・データ」によると、イスラエルではデルタ株が確認された時、国民の約56%が接種を完了していた。一方、英国の接種完了者はデルタ株確認の時点でわずか2%。数日前にようやく50%に到達した。
イスラエル政府は先週、デルタ株に対する米ファイザー製ワクチンの感染防止効果は64%、重症化や入院を防ぐ効果は93%と発表した。
米ノースカロライナ大学の疫学者、ジャスティン・レスラー教授は、デルタ株への効果は従来株よりわずかに低下する程度だと指摘。これを考えれば、米国内での見通しも比較的明るいとの立場を示す。
米国全体の接種率は、デルタ株確認の時点で約16%、現在は約48%と、イスラエルと英国のほぼ中間に位置している。
ただし、米疾病対策センター(CDC)の最新データによれば、接種を完了した人の割合は東部バーモント州の約3分の2に対して南部アラバマ州は約3分の1と、州ごとの違いが目立つ。
レスラー教授は、新型ウイルスが今後も変異を繰り返し、免疫のすき間を縫って拡散する可能性を指摘したうえで、当分の間はワクチンによって「重症例が事実上、排除されるだろう」との見通しを示した。