英裁判所、ドバイ首長が妻の携帯電話をハッキングと認定 スパイウェア使い
ロンドン(CNN) 英国の高等法院が、2人の子どもの親権争いを続けるアラブ首長国連邦(UAE)ドバイ首長国のムハンマド首長がドバイやUAEのエージェントを利用して、元妻のハヤ元妃やその法律顧問、スタッフの携帯電話をハッキングし監視していたと認定していたことがわかった。6日に公開された裁判所の判示で明らかとなった。
裁判所は、ハッキングの対象はハヤ元妃のほか、その個人秘書1人、弁護士2人、護衛部隊2人であり、イスラエル企業がドバイとUAEに提供した「ペガサス」というソフトウェアが利用されたと認定した。
このソフトは対象者の位置の追跡、電話の会話内容の取得のほか、連絡先やパスワード、カレンダー、写真へのアクセスが可能。アプリやメール、ショートメッセージサービス(SMS)を通じたメッセージも取得できる。
裁判所は、これらの行為は「完全な背信と権力乱用」を示すもので、証拠を検討しても「ハッキングの事実、ペガサスがハッキングに使われていたという事実は揺るがなかった」と述べた。
また、「父親は彼女の電話がハッキングされ、警護が脅かされているという前提状況の中、子どもの世話をしている母親を心配する兆候を一切みせなかった。代わりに、母親が求める認定に対抗し、すべての点で母親と争うための法定チームを招集した」とも指摘した。
裁判所の判断は、報道規制の解除後に公表された。
ムハンマド首長は同日声明を出し、裁判所の判断を争う姿勢を見せた。
ムハンマド首長は「私はこれまで私に対して行われた主張を常に否定し、今後も否定する。今回の件は国家安全保障の仮想作戦に関係する。私的な家族の訴訟に関わる政府の長として、外国の裁判所に私個人または顧問を通じて、このような機密事項に関する証拠を提出するのは適切ではない」と述べた。
また、「ドバイ首長国もUAEも本訴訟の当事者ではなく、審問に参加していない。したがって裁判所の認定は不完全な全体像に基づいたものとならざるを得ない」「認定は私や私の顧問に開示されなかった証拠に基づいている。従って、私は不公正な方法で認定が行われたと主張する」とも述べた。
ドバイはUAEを構成する7つの首長国の一つ。
ムハンマド首長はUAEの副大統領兼首相でもある。そのためムハンマド首長の弁護士は国家行為理論を持ち出して、英国高等法院の管轄権についても争っていた。だが裁判所は今年1月、同理論はハヤ元妃の申し立てに裁判所が判断を下すことを妨げないと決定していた。
今回の認定はロンドンで続くハヤ元妃を含む審問の一環となる。裁判所は昨年3月、ムハンマド首長が別の自身の娘2人の拉致とドバイへの強制帰国を組織したと断定している。
ムハンマド首長はこうした訴訟のすべての訴えについて否定している。